AI時代のリーダーに求められる「チームワーク作り」の心構え
次に、Special Sessionが行われた。登壇するのは、早稲田大学商学部 准教授の村瀬 俊朗氏。「AI時代のリーダーシップ、創造的なチームの在り方」をテーマに講演した。
「生成AIに限らず、企業を取り巻く変化というものは常に起こっています。そのため、リーダーは変化に対応する力をつけ、どんな環境にも適応できるチームワークを構築しなければなりません。今回は、チームワーク作りを考える上での重要なポイントを、①方向を示す、②思考の柔軟性、③学習の姿勢、④心理的安全性、⑤振り返りの5つに絞ってお話ししていきます」(村瀬氏)
まずは、「①方向を示す」について。リーダーは、従業員を束ねて一定の方向に導くこと、そして各人を監視するのではなく、それぞれがポテンシャルを発揮できるように環境を整えることが必要だという。
次に、「②思考の柔軟性」について。ある研究で、DXに成功している企業と難航している企業を比較したところ、成功している企業ほどリーダーが変化の必要性を日々語り、従業員を一定の方向にまとめ上げていたことが判明。そして同時に、そういった組織では「新しいことに挑戦してよい」というメッセージを常に上から発信していたそうだ。
一方、企業の現場から集まるのは「説明がほしい」という声だという。なぜ変化が必要で、なぜ行動するべきなのか説明されないと、仕事や会社が良くなっていくイメージが持てない。また、チームのリーダーに伝えた現場の意見がトップに届かず、反映されなければ現場は疲弊していく。
「こうした状況から脱却するために重要なのは、リーダーが持つ“ものの見方”、つまり認知フレームワークを柔軟なものに変化させることです。そうしなければ、『今までのやり方はこうだったから、今後も変わらないだろう』『生成AIが登場しても、私たちに影響は少ないだろう』と思い込み、変化を求めようとしない可能性があります。この姿勢はチームにも影響するため、一部のメンバーにやる気があってもうまくいきません」(村瀬氏)
「③学習の姿勢」はどう示すのか。良い判断ができるリーダーは、現場からの情報収集を迅速に行っているという。たとえばテクノロジーに優れた企業では、リーダーが週に一度、テクノロジーに関する学習や、デジタルに関する試験的な取り組みとその結果について情報共有していた。一方、平均的な企業のリーダーの情報共有は、月一回にとどまっていた。
また、チームを「学習する場」として機能させたいのであれば、リーダー自ら学習することも必要だ。あるテクノロジーを導入する際、導入に成功するチームでは、リーダーが「これは単なる技術や知識のアップデートではなく、チーム全体の働き方のアップデートだ」と捉え、自分やチームの役割などを変え、自らも学習しながら、テクノロジーを実装していく。しかし、導入に失敗するチームのリーダーは、「これは単純な技術や知識のアップデートだ」という捉え方にとどまってしまうという。