飲食店立ち上げを通してメンバーの“覚醒”を促す
──最初に「飲食店立ち上げ研修」の概要を教えてください。
畠山和也氏(以下、畠山):本研修は、企業の幹部候補を対象に、飲食店の立ち上げを通して “経営”を体験してもらうことを企図したものです。全3ヵ月の研修で、最初の1ヵ月がプランニング期間、残りの2ヵ月が実店舗の運営期間です。
ある程度大きな組織の中で仕事をしていると、部署や役割に応じた“パーツ”の業務に終始してしまいがちです。役職が上がるにつれて高い視点から多角的に物事を捉えられるようにならなければならないのですが、“パーツ”の積み重ねではその視点を得ることはなかなかできません。また、制度としてジョブローテーションを取り入れている企業もありますが、数年かけて個々の部署の視点を学ぶことしかできていないのが実情です。
そこで本研修では、飲食店の立ち上げを経験することで、事業全体を多角的に見通せる視点を獲得してもらうことを目指すことにしました。新規事業の立ち上げでも同じような視点を得ることはできますが、経営のバランス感覚を養うのに時間がかかったり大きな投資が必要だったりしてしまいます。飲食店の場合、コンパクトに一通りの経営全体を体験することができるので、時間もコストも抑えた上で経営を学ぶことができるのです。
──森部さんはNECパーソナルコンピュータの商品企画本部の次期部長候補たち向けにこの研修を導入されていますが、その背景や狙いを教えてください。
森部浩至氏(以下、森部):弊社では次の昇格者候補を検討するにあたって、従来の社内研修の中には“経営”を体験できるものがありませんでした。「飲食店立ち上げ研修」では、事業計画や商品企画、マーケティング、PL管理、オペレーションと経営に必要なすべての要素をコンパクトに体験することができます。そこで、部長候補のメンバーに経営で必要な知識や経験を身につけてほしいと考え、この研修を導入することにしました。
──この研修では経営で必要な知識や経験、視点を身につける以外に、どのような点に期待しているのでしょうか。
森部:今回の研修を通じて、もう一段上のステージ進むような“覚醒”をしてほしいと思います。私自身、仕事の業務で強い負荷がかかった際、それを乗り越えた後に、一段階ステップアップしたと実感したことがあります。これは座学の研修やOJT等では身につくものではなく、この一皮むけた感覚は、負荷がかかる中で試行錯誤することでしか身につけることができない感覚です。