デザイナーやデータ人材は「あくまで支援者」であるべき
岩嵜:サービスデザインユニットの活動は、まさに「未来のデザイナー像」ですね。旧来的なデザイナーは、ある一定の型を当てはめることで多くの人をまとめ上げていましたが、これからの時代のデザイナーには、デザインを媒介に人々の自発性を触発しながら、それぞれの人を繋ぎあわせていくことが求められていると改めて思いました。
鈴木:まさにそうだと思います。日々の業務のなかでも、デザイナーが自らの意図を押し付けようとすると、取り組みがうまくいかないことが多いです。
そのため、サービスデザインユニットのメンバーには「ポートフォリオを作ろうとしないでほしい」と伝えています。感覚的な話なのですが、デザイナーが「これが自分の仕事である」として仕事をすると、どこか可愛くなりすぎたり、スマートになりすぎたり、本来の役割からズレてしまうことが少なくありません。そうではなく、あくまで組織をドライブする支援者の立場であってほしいと。
岩嵜:サービスデザインユニットの役割は、日本の行政組織においては、特に求められているかもしれませんね。日本の行政組織には、極めて優秀な人材が多いのですが、昨今の中央省庁における長時間労働の問題などを鑑みても、組織のリソースが分散しているように見えます。そうした分散したリソースを集約し、一定の方向に向かわせるには、デザイナーという支援者の存在が必要なのではないでしょうか。
鈴木:その意味では、デザイン組織とデータ組織は立場が似ていると感じます。デジタル庁にも「ファクト&データユニット」というデータ活用してファクトに基づいた意思決定を促進する組織が設けられているのですが、ともに「意思決定権者ではない」という点では共通しています。データ組織にせよ、デザイン組織にせよ、「組織の支援者である」という認識のもとで専門的知見を発揮するからこそ、組織をドライブさせることができるのだと思います。