ビービットは、最新レポート「顧客起点の成果が加速する地銀DX 安定したデジタル成果を生み出す方法論」を公開した。
同レポートでは、地方銀行のDXの変遷と現在の課題を整理した上で、DXを成功に導く鍵となる「顧客起点でビジネス成果を創出するための方法論」について解説している。
地方経済を支える地銀、DX推進を阻む2つの壁
コロナ禍を経て、地方銀行においては商圏の人口減少・高齢化など従来からの課題対応に加え、疲弊した地元企業の資金繰り支援や分散型社会への対応など、地域経済の活性化を担うという使命がより明確になっているという。
こうした役割を果たすため、地方銀行はDXを推進し、より多くの顧客接点を通じて情報を収集しながら、効率的な業務運営を遂行できる仕組みを構築することが求められていると、同社は述べている。
数年前から多くの地方銀行がWebサイト・アプリなどのデジタル活用を開始したが、次第に行内の理解や協力を得ることが困難になり、組織全体でDXに注力し続けることができなくなったというケースが増えているという。その理由は大きく2つあるとしている。
【理由1】DXとビジネス成果のつながりが見えないことによる不信感
世の中の流れに合わせて一定のデジタル対応をしたものの、それらの活動とビジネス成果が明確に紐づいていないことにより、DX推進チームのメンバー以外からは「これ以上のDXを進めてもビジネスにならない」と思われがち。
【理由2】商圏における高齢化・デジタルリテラシの格差を背景としたデジタル活用を推進することへの疑念
地方銀行では一般に顧客に占める高齢者の割合が高く、新たに整備したアプリなども十分に活用されにくい傾向にある。そのため、これ以上のデジタル対応の意義を見出しにくいという事情がある。
こうした課題に対し、ビービットは地方銀行をはじめとする金融機関のDXによるビジネス成果創出を支援してきたという。「DXの目的は新たなUXの提供」であることを掲げ、顧客を起点にしたサービス・組織全体の体験向上によって成果を生み出していると述べている。
同レポートでは、そうした支援実績の中で得られた知見をもとに、どのように地方銀行がDXを加速しビジネス成果を生み出せるかについて解説しているという。
顧客起点アプローチでデジタル施策の確度を上げる
レポートで解説している方法論の中心となるのが、顧客起点アプローチ。これは「顧客の定性的な一次情報から施策を考える」という手法である。
これまで主流だった窓口で直接顧客と会話をする対面チャネルとは異なり、デジタルチャネルではコミュニケーション不全が起こっていることに気付きにくい傾向にあるという。特に、各種ローンなどの金融商材の検討においては、顧客によっては10年に一度、あるいは一生に一度の買い物という機会に、初めてWebサイトを訪れる。そうした希少な場で、専門用語が理解できないなどのコミュニケーション不全が起きてしまうだけで、10年に一度のローン申し込みのチャンスをふいにしてしまうとしている。
こうした機会損失を避けるためには、顧客の定性的な一次情報が有用だという。アクセス数の推移などのような定量的なデータの活用は大切だが、それだけでは顧客行動の「結果」しか把握できない。「理由・背景」がわからないために、属人的な経験や勘に頼った施策を打つことになり、精度や再現性を担保できなくなるという。
一方、定性的な一次情報を取得し分析することで、顧客行動の理由や背景がわかり、検証可能で再現性の高い施策立案ができるようになると、同社は述べている。また、こうした施策立案と検証を繰り返していくことで顧客理解が進み、さらなるビジネス成果を生み出しやすい組織に成長できるとしている。
カーローン申し込み数1.39倍を実現した、足利銀行の具体的な実践例
レポートでは、足利銀行の事例を通じて、顧客の一次情報から立案した施策によってビジネス成果を上げる方法を具体的に紹介。足利銀行は、企業の想定と実際の顧客行動のギャップを捉え、より良い顧客体験を提供するべく実装したサイト改善により、カーローン申し込み数を1.39倍に向上させているという。
また、レポートの後半では、顧客の定性的な一次情報を得る具体的な方法を複数紹介。自社の状況に合わせて取り入れやすいものから顧客起点アプローチを実践することで、ビジネス成果を創出し、全社的なDXを加速することが可能になるとしている。