データで浮き彫りになった「インドネシアの市場環境」と「新規事業開発のヒント」
プロジェクトは、イオンモールインドネシアの課題に対応する形で「イオンモールインドネシアのあるべき姿を描き出す」「既存事業での集客を強化するために必要なプロセス・機能を明確化する」「インドネシア人の嗜好性を把握し、日本の文化やコンテンツを活用した新規サービスを創出する」の3つのテーマで推進。長期的にどういった価値を提供していくのかを定めた上で、バックキャストで既存ビジネスと、新規サービスのベクトルが合っているのか、という観点で3つのプロジェクトを並行した。
具体的には、まず、イオンモールインドネシアのマネージャー以上の方へ、現状の働き方や今後どういう価値を提供していきたいかなど、さまざまな角度からインタビュー。さらに、既存顧客または潜在顧客への定量調査や定性調査を実施。どういった生活環境の方が顧客となるのか、何が理想なのかを明確にした。
従業員へのインタビューと、既存・潜在顧客への定量・定性調査の結果をもとに、両者のギャップを踏まえたうえであるべき姿を描き出し、その方針に基づいて既存事業の強化策や新規事業案を生み出していった。インタビューやワークショップにはデザインアプローチ、定量調査にはデータ分析が活用されており、フォーデジットとNTTデータの双方の知見が融合したプロジェクトといえる。
さらに、新規サービスの検討では、925名の方に定量調査を実施し、嗜好性をオンライン調査。うち17名にインタビュー行い、ユーザーへの理解を深めた。さらにその中のビジネス機会がありそうな5名を、3社によるワークショップにてペルソナとして描き、日常の中でどういったサービス機会がありそうかアイデアを抽出。現在はそれらをフィルタリングして、具体的に実現の可能性が高そうなものをピックアップし受容性調査をしている。
こうしたデザインとデータを活用したプロジェクトは、平田氏らイオンモールインドネシアに大きな示唆を与えた。特に定量調査による受容性調査の結果は、社内でも驚きをもって迎えられた。
「まだまだインドネシアに知らない側面があることに驚かされました。ナショナルスタッフも、これまでの事業での常識が覆され、非常に驚いていました。新たな事業を生み出すうえで、データによる受容性調査での発見は、多くの学びを得たと感じています」(平田氏)
それと同時に、定量調査のデータからは新規事業のヒントも浮かび上がってきた。プロジェクトの支援を担当したNTTデータインドネシアの山本錦弥氏は、定量調査を通じて得られた気付きについて説明した。
「既存のユーザーだけでなく潜在的なお客様にも広く定量調査を行うことで、新規ユーザーへのアプローチにつなげられました。また、インドネシアで生活、仕事をする中で、マンガやラーメンなど、日本文化が深く受容されていると感じてはいましたが、今回のデータ分析を通じて確証を得られました。ジャカルタでは毎年、日本をテーマにした数万人規模のイベントが開催されますし、日本文化に好意的な人はかなり多いようです。ですが、高級品への関心の高まりなど、当初は予想していなかった傾向も掴むことができ、定量調査には一定の手応えを感じています。こうした結果は、新規事業を創るうえで大きなヒントになるのではないでしょうか」(山本氏)
異なるバックボーンを持つ人々が集まるからこそ多様な文化が生まれるが、まさにそれを一つにまとめて同じ方向に走っていくとなると、カルチャーの違いから共感などがしづらくなる。インドネシアはムスリムが多く、生活様式の違いなど日本人からすると知らないことがたくさんあるが、そういったところを今回の調査で発見できたといえる。
また、近年、SNSなどの普及により、世界各国の情報を手軽に入手できるようになった。しかし、その一方で、商品の輸出入には一定の規制や流通コストが発生するため、「商品やサービスは知っているが、購入・体験できない」という傾向が世界的に強まっている。イオンモールインドネシアは、こうした状況をビジネスの機会と捉え、新規事業を構想しているという。