約150年の歴史を持つ三井住友銀行において、わずか7年前に誕生したデザインチーム
まずは松下氏より、三井住友銀行内における「デザイン」そしてデザインチームの歴史と位置づけについて説明があった。
三井住友銀行は、1876年に創立した三井銀行と、1895年に創業した住友銀行を起源としており、約150年の歴史がある。一方、三井住友銀行のデザインチームは発足からわずか7年、総勢10名前後の若く、少数精鋭のチームである。2016年に顧客体験全体を向上させるため、企画部門にデザインチームを同床化しようとしたのがきっかけだ。
2015年以前は企画部門がビジネス企画と要件定義を行い、開発やデザインは外部に委託してきた。しかしその仕組みでは顧客と開発者の間に距離があり、顧客ニーズがうまくサービスやプロダクトに反映されていなかったケースがあったという。
しかし現在は、デザイナーが企画部門と企画を考え、外部パートナーとも連携しながら実際のデザイン・開発を行う形へと移行した。一気通貫して全体のプロセスにデザイナーが関与するようになったため、顧客の意見をよりプロダクトに反映できるようになった。
これが結実し、今年の3月には「Olive」という個人向けモバイル総合金融サービスがリリースされた。預金管理だけでなく、クレジット、証券、保険といった、様々なグループ企業や提携企業の金融サービスと連携・利用できるもので、Oliveという名前には「Live=暮らし」を「Oで丸く繋いでいく」という意味が込められているという。足掛け2年のプロジェクトであり、デザインチームがクリエイティブ面を先導した代表例である。
リリース後、8月までの約半年間に100万人がアカウントを開設しており、「多くの顧客にご利用・ご評価いただいている」と松下氏は語る。現在もウェブ上のSMBCのコミュニティサイトに届いた意見や、日々の利用データを分析し、企画メンバーとデザイナーがともに、機能やサービス仕様の改善に努めているという。
現在のデザインチームには多種多様なバックグラウンドを持つメンバーが揃っており、フリーランスや大学の教員といった経歴を持つメンバーの他、松下氏自身も新卒で日系の電機メーカーに入り、ハードウェアのプロダクトデザインやサービスのデザイン開発に従事してきた経歴がある。
デザインチームはデジタルプロダクト開発の他に、課題解決ワークショップやセミナーなどの社内デザイン浸透まで、幅広く取り組んでいる。また、チームビルディングの一貫としてメンバー全員によるワークショップを行うなど「全員がこのチームは何ができるか、何をしたいかを考えている前向きなチーム」と松下氏は話す。