2026年5月21日、KPMGコンサルティングは、AIを活用したライフサイエンス企業の変革と価値創出をテーマとするレポート「Intelligent life sciences-AI主導のトランスフォーメーションを通じた価値創出へのブループリント(日本語版)」を発表した。
本レポートは、世界の主要市場で管理職1,390名(うちシニアAIリーダー183名)を対象にしたKPMGインターナショナルの調査結果に基づいている。内容は、ライフサイエンス領域におけるAIの導入・活用状況、現状の課題、AI投資におけるROI向上のための手法、そして価値を重視したAIアプローチを分析している。
主な調査結果として、86%の組織がAIを全面的に取り入れることで競争優位が高まると認識し、研究開発や臨床試験、サプライチェーンから商業活動まで幅広くAIの導入が進む現状を示している。さらに、92%の組織が投資すべきAI技術や機能について明確に理解している一方、69%の組織が今後5年間を見据えた戦略的ビジョンを持っていることが明らかになった。
AI導入による業務改善も著しく、97%の組織が業務効率化などの成果を実感している。しかし、高いROIを実現できているのは31%にとどまり、51%が中程度、18%は短期的な成果を得るのが難しいと回答している。AI導入が好調な一方で、多くの組織が投資回収に課題を抱えていることが特徴的である。
組織構造の柔軟性がROI向上の鍵となっている。アジャイルモデルを組み込んだ部門別モデルを採用することで、高いROI実現可能性は約2倍に向上する傾向が見られた。加えて、AI導入における最大の阻害要因として「データ」が挙げられ、68%がデータのサイロ化や形式の不統一、品質のばらつき、セキュリティ・プライバシーへの懸念を指摘した。
また、エージェント型AIの導入についても89%の組織が特定プロセスでの自律的意思決定を許容し、85%が自律的エージェントシステムの拡大を進めていると回答している。これにより、今後は生成AIによる臨床文書作成や分子モデル化など、より高度で柔軟な業務への活用が進展していく見込みだ。
AI活用による長期的な価値創出を実現するためには、1)価値実現にフォーカスしたAI戦略の策定、2)イノベーションエコシステムへの信頼獲得、3)テクノロジーとデータの拡張性の高い基盤構築、4)AI活用型業務文化の育成、が重要活動として示されている。
さらに、AI推進のアプローチとして、全社・部門・基盤といったレイヤーごとに、Enable(能力付与)、Embed(組込み)、Evolve(進化)の3段階でフェーズごとの施策を進めることが有効であるとした。
Evolveフェーズでは、バイオ医薬品やメドテック、デジタル医療分野の企業、規制当局が一体となり、予測精度や個別最適化の向上が期待される。具体的には、AIによる個別化医療、リモート医療、臨床試験や創薬へのAI実装、AI主導のエコシステム構築が例示されている。
本レポートは、ライフサイエンス分野の経営企画や事業開発担当者にとって、AIによる変革推進や投資判断を行う際の実践的な知見を提供する内容となっている。
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