ブラザー工業が進めるオープンイノベーション
こうしたブラザー工業におけるイノベーションは、社内だけでなくパートナーや顧客との連携によるオープンイノベーションからも生まれている。安井氏自身、1997年から1999年までシリコンバレーに滞在し、帰国後は製品立ち上げのプロジェクトに関わりながら、2003年頃からベンチャースタートアップの情報収集にも取り組んできた。その中で、当時国内独立系で4番手だった日本アジア投資とCVC 「JAIC-Atopファンド」を立ち上げ、2013年に満期を迎えている。
安井氏は、「開始後すぐにライブドア・ショック、2009年にはリーマン・ショックがあり、非常に厳しいファンド運営だったが、何とかプラスで終えられた。ただしCVCの難しさも感じ、その後はVCファンドへのLP出資に切り替えた。DNX Venturesの前身であるDraper Nexus Ventures(当初はDFJ JAIC Venters)の1号ファンドは、北米の大手ベンチャーキャピタルであるDFJのネットワークファンドとしてスタートすることを目指していた際に、リーマン・ショックで資金確保が非常に難しかったが、ブラザーが最初に出資をしたことで、その後、資金が集まるようになりファンド設立に役に立つことができた」と話す。