「PBR1倍割れ」は“落第”の通信簿 日本で極端に多い傾向に
日本は欧米に比べ、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業の数が圧倒的に多い──。冒頭、鈴木祐太氏(ベイン・アンド・カンパニー パートナー)は深刻な課題を投げかける。
PBRは、現在の株価がその企業の資産価値に対して割高か、割安かを判断する目安として用いられる。一般的には、PBRの数値が低いほど株価が割安となり、投資家からの期待値が低い状態となる。「PBR=1倍」とは、株価と資産価値が同水準にあることを意味する。
もちろん、企業の価値を測る指標はPBRだけではない。しかし、自社がマーケットからどのような評価をつけられているか知るための指標としては無視できない。それはなぜか。
PBRが1倍以上の場合、一般的なマーケットからの評価としては「このまま事業を継続して、しっかりと稼いで株主に還元してください」と期待されていると捉えてよい。しかし1倍を下回っている場合、「今の事業を継続するよりも、資産売却してそれで得た益を株主に分配したほうがベターなほど、会社のオペレーションや業績が悪い」という評価が下されていることになる。
すなわち、「PBRが1倍を割っている」状態というのは、マーケットから“落第の通信簿”をもらっているようなものだと鈴木氏は語る。
日本には、この落第評価をつけられている企業が非常に多いという。鈴木氏は、米国のS&P500、欧州のSTOXX600、そして日本のTOPIX500に入っている企業のPBRを比較したデータを紹介した。
日本では、PBR1倍以下に該当する企業が全体の40%以上。米国の5%、欧州の24%に比べ、圧倒的な割合の高さである。つまり、現在は日本企業への相対的な評価が非常に低い状態だと言える。
「日経平均株価は現在、史上最高値を記録していますが、真に実態を伴った強固な日本経済を実現するためには、この状況を改善していく必要があります」と鈴木氏。アリバイ作りに終始するのではなく、本質に迫るような改善策を、危機感をもって実践していくべきだと主張する。
PBRの改善は、財務やIR、経営企画の担当者だけでできることではない。経営者や取締役会など、いわゆる経営層のコミットメントとアクションが重要となる。しかし、利益や資本にまつわる一見難しそうな話を「財務ごと」として担当者に丸投げしてしまい、自身は関与したがらない経営者や役員が多いという。
そこで鈴木氏は、多くの人が苦手意識を持つ「財務の専門家から見たPBR」と、それをわかりやすく解釈するための「経営者の目線から捉えるべきPBR」を比較しながら説明した。