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「過去を分析するデータ」と「未来を描くデザイン」──ヒトを中心に据え、データとデザインを経営に活かす

GiXoデータインフォームド・サミット レポート:後編

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 4月23日に東京ミッドタウンにて開催された「GiXoデータインフォームド・サミット」では、組織運営をデータインフォームドに行うための変化の生み出し方やデータインフォームドな事業の実践例などを紹介し、議論しあった。前後編の後編にあたる本記事では、デザインとデータを組み合わせ、どのように経営に活用するのか。また、その際に重要となるヒトを中心に据える方法などは議論された講演やパネルディスカッションの様子をレポートする。

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曖昧で非言語的な価値を拾い上げ、言葉や形を与える。デザインの5つの力とは

 セイタロウデザイン代表 クリエイティブディレクターの山崎晴太郎氏が「デザイン経営とデータインフォームドの幸福な関係」と題した講演を行った。

 同氏はデザインが持つ力を5つに区分する。

 1つ目は「非連続な未来をビジョナリーで描く力」、2つ目は「物事の本質を捉えてシンプルにまとめる力」、3つ目は「顕在化していない概念を可視化する力」だ。デザインが経営や事業にとって重要だという潮流はここにあり、特に新サービス創出において潜在的な課題やニーズを見つけることが不可欠で、それがデザインの力の一部だとする。

 そして、4つ目は「一貫した気配で彩り美しく佇ませる力」。マルチチャネル化が進む中で一貫したブランドメッセージを発信し、ブランド価値を高められること。そして最後の5つ目が「人の気持ちを動かす力」だ。デザインには人間の内面に働きかける力があるという。

 山崎氏はデザインでもっとも重要なのは「新しいシャツを買ったときに外出したくなる」といった「気配」を作る点にあると語る。デザインとは、製品やサービスの見た目にとどまらず、人々の意識や行動に働きかける営みなのだ。

 曖昧で非言語的な価値を拾い上げ、新たな形を与えるのがデザイナーの仕事である。そのため、山崎氏は「データで表された時点で、デザインとは違う力学で動いてしまう、とデザイナーはどこかで感じてしまう」と話す。

データがデザインの不完全性を補足する。その3つの力とは

 しかし、実際には、データはデザインにとって3つの価値を持つという。1つ目に「課題の解像度を高め、デザインの初速を上げる」ことができる。常に曖昧さが付きまとうデザイン分野において、大まかな方向性を見出すためにデータを使うことは重要だ。2つ目にデザインから生まれた「仮説の蓋然性の証明」にも役立つ。さらに、3つ目として「主観的絶対性の修正」が可能になる。

 名前のつかない感情や感覚を拾い上げ、言語化し、世の中に接続するには、自らの体験からデザインへのヒントを見出す必要がある。しかしデザイナーの主観と現実にはずれが生じかねない。その際にデータが客観的な立場から修正役を果たすことができる。

山崎晴太郎
株式会社セイタロウデザイン 代表 クリエイティブディレクター 山崎晴太郎氏

 一方で、データを全て正しいと考えるのにも問題がある。自分自身の感じたことや経験には絶対的な価値があると山崎氏は語る。重要なのは、経験とデータと組み合わせて考えることだ。そして、データはあくまで様々な材料のうちの一つにすぎないのだ。

 この考えをさらに分解すると、「カネのほうがヒトよりも相対的な優位性が高い」、そして「価値は有限だ」という発想が見えてくる。これでは、「ヒトを傷つけてでもカネを奪ったほうが良い」「カネは奪い合うものである」ということになってしまう。

 デザインとビジネスでともに重要なことは「人々の心を動かす」ことだ。山崎氏は、論理を追求すれば正解は見つかるかもしれないが、人の心が動かなければ意味はない、という。さらに同氏は、「正しいもの」から「心を動かすもの」に変えていくことは、デザインの持つ力であり、経営や事業を行う上で不可欠だと強調する。正解をわくわくする体験に変換する力、それこそがデザインの強みなのだ。

 山崎氏は以下のように語り、講演を締めくくった。

「『データドリブン』という言葉には人間を置き去りにしている感覚がありました。しかし、『データインフォームド』はもう1回人間を中心に据える感覚を取り戻すことができる、データとの付き合い方、向き合い方なのではないでしょうか」

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

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