リードカスタマーと深く付き合うためにもロードマップが必要だった
宇田川元一氏(以下、敬称略):色々な会社の中期経営計画を読んで思うのですが、すごくきれいだけれど抽象的な言葉で書いてあって、いかようにも解釈できるんですよね。そうすることで自由を担保しようという狙いだとは思うのですが、それでは社員は動きようがないし、「現状維持なんだな」と解釈するでしょうね。
ヨコオさんの場合、ロードマップを作ることで曖昧さを廃することができたのだとすると、それを始めるきっかけはなんだったのでしょうか。
坂田毅氏(以下、敬称略)事業に関わるそれぞれの部門がそれぞれの方向を向いているという課題意識がありました。それと、私が以前はパナソニックにいて松下幸之助が考えた事業部制でやっていましたので、損益責任を明確化していくためには事業部長の縦の軸を強くしたいという思いがありました。事業部長の意思を明確にし、みんなが同じ方向を向くために、ロードマップを明文化するという考え方です。
ポイントは明文化です。頭の中にあるだけではみんなと共有できません。明文化することで具体化もします。その代わり、それは仮説なので3ヶ月経って変えてくれても一向に構わないと。ただ、変えるときにはちゃんとみんなに再共有してオーソライズしてくれということだけを条件に進めていきました。
もう一つは、当社のDNAとしてリードカスタマーと深く付き合うという伝統があります。我々がお付き合いするようなリードカスタマーは内部で必ずロードマップ、未来の方向性というものを持っています。それを我々に開示していただけるところまでしっかり信頼関係を作り、我々もそれを超えるような未来提案ができなくてはいけないという思いを各事業は持っています。
そういう意味では、経営企画からのトップダウンでやるようになったというよりは、現場でもそういうものが必要だと思っていたんですね。
宇田川:営業は顧客との対話の中で自社のロードマップが必要だと感じていたし、経営サイドはみんなの努力がバラバラの方向を向いていたら良くないという意識があった。両方から課題意識が出てきていたということなんですね。非常に勉強になります。
将来の方向性を示すロードマップがあって、新しい分野が開拓できれば会社の次の柱を担える可能性もあるということが、皆さんが新しいことに取り組む動機になっているというお話でした。他に、現業をやりながら自分の時間を新たな取り組みに投資することを促進するような仕組みはあるのでしょうか。例えば人事評価はどうなっていますか?