ボストンコンサルティンググループ(以下、BCG)は、日本の半導体産業の課題や将来の展望を考察したレポート「日本の半導体産業の再興:技術革新を通じた『経済産業政策の新機軸』の加速」を発表した。
2024~2027年DRAM出荷量の年平均成長率は21%
半導体メモリには、主にデータの保存に使用されるNAND型フラッシュメモリ(以下、NAND)と、演算処理負荷の高いデバイスの「作業用メモリ」として機能するDRAMの2つの装置が含まれる。
生成AIへの極めて強い需要を背景に、AI関連サーバーの出荷台数は2023年から2027年にかけて6倍に増加すると予測されている。
これと同時期の2024年から2027年の間、DRAM出荷量の年平均成長率は21%に達すると見込まれており、この成長は主に生成AIなどに使用される次世代DRAMである高帯域メモリ(HBM)が牽引すると予想されるという。
日本の次世代メモリ分野における2つの強み
同レポートでは、次世代メモリ分野における日本の優位性について、2つの点が指摘されている。
1点目は、日本がメモリ関連の素材レベルで多くの知的財産を生み出している数少ない国である点。2点目は、先進的なメモリチップの製造において、最先端技術である「EUV(極端紫外線)リソグラフィー」の活用が見込まれる国である点だという。
これらの優位性は、日本が従来強みを持つ半導体材料や製造装置のエコシステムと結びつくことで、次世代DRAM開発の成功を後押しすると分析している。
日本における大規模メモリ工場の経済効果は10年で860億ドル
日本の半導体産業では近年、政府の経済政策である「経済産業政策の新機軸」に基づくさまざまな投資が行われ、特にロジック半導体分野を中心に活性化が進んでいる。
このような状況下で、次世代DRAM産業の育成は、日本の半導体産業のさらなる活性化を促し、「経済産業政策の新機軸」の実現の加速を期待されているという。
BCGの分析によると、大規模なメモリ工場が10年間で創出する雇用・賃金、税収、材料供給者などの経済効果は最大860億ドルに達する可能性があり、日本は大きな経済的恩恵を享受すると見込まれる。
さらに、次世代DRAM産業の発展は、脱炭素の推進や供給網の強靭化、生産性向上といった重要な社会課題への対応にも貢献できると考えられるという。
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