睡眠不足による経済損失額は約20兆円 国家規模の課題に挑む
大角:ネミエルという会社と、展開しているサービスについて教えてください。
松本:当社は、「世界の睡眠不足を解消する」というミッションを掲げています。睡眠には不眠症や睡眠時無呼吸症候群といった「睡眠自体の課題」を医学的に解決するアプローチもありますが、当社は「睡眠不足の課題」に着目しているのが特徴です。
特に焦点を当てているのが、ビジネスパーソンの睡眠不足です。米国のRAND研究所が2016年に発表した調査結果[1]によれば、労働者の睡眠不足による日本の経済損失額は、GDPの2.92%、約20兆円に上るとされています。ビジネスパーソンが十分に眠れていないというのは、もはや個人の問題ではなく、国家の経済をゆるがす課題なのです。
大角:いかにマーケットが大きいか理解できました。その課題を解決するための手段が、「Nemielu」だということでしょうか。
松本:はい。「Nemielu」は、睡眠不足解消をサポートするWebサービスです。「眠気が見える」という名前の由来通り、眠気を測って可視化することで睡眠を評価することを目的としています。いわば、ストレスチェックの眠気バージョンです。
大角:睡眠の時間や質を測るサービスはよく見かけますが、「Nemielu」が計測するのは眠気なのですね。眠気はどのように計測するのでしょうか。
松本:アプリケーション上で、5分程度の簡単なチェックテストを行います。眠気は、寝不足が続くと気づかなくなることもあるので、主観的な指標と客観的な指標の両方を測定できるようにしているのがポイントです。主観的な指標はアンケートの結果から、客観的な指標はモグラ叩きのようなゲームの結果から導き出します。
大角:各評価の信頼性は、どのように担保しているのですか。
松本:複数の睡眠専門医に、チェックテストの質問項目から指標の算出項目まで監修していただいています。私自身が医学的なバックグラウンドを持っていないことがサービスの信頼性を高める上で大きなネックだったのですが、睡眠関連の学会に足を運ぶうちに多くの研究者たちと知り合い、監修してもらえることになったのです。
大角:なるほど。そしてtoBで展開しているということは、この「Nemielu」を企業が購入し、社員が無料で使うということだと思うのですが、どのような企業で導入されているのでしょうか。
松本:業界を問わず、様々な企業にご利用いただいていますが、中でも物流・運輸業界の企業は睡眠不足に対する感度が高いと感じています。睡眠不足が直接、事故を誘発してしまうという危機感があるからでしょう。
大角:企業側のニーズとしては他にどのようなものがありますか。
松本:まず挙げられるのが、労働生産性の向上、次に社員の休職・離職防止です。さらに最近では、採用プロモーションに活用されることも多くなってきた印象があります。健康と安全をサポートしているというプラスの企業イメージが付き、求職者やその親にもアピールできるようです。
大角:サービス導入の効果が気になります。
松本:まだ企業向けに展開し始めてから日が浅いので、データは少ないですが、行動変容につながり眠気指標が下がったという企業も出てきています。
そして多くの企業から聞くのは、「睡眠や健康に関わる会話が社内で増えた」という声です。チェックテストを面倒だと思う社員は少なくありませんが、実は面倒くさがる社員こそ、睡眠に問題を抱えていることが多いです。「Nemielu」をコミュニケーションツールとして活用することで、そういった社員たちの意識にもリーチできるようになったのは、企業にとっても大きな成果だと思います。
[1] RAND「Why sleep matters — the economic costs of insufficient sleep」