パーソル総合研究所は、「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」の結果を発表した。
同調査における「1on1」と「成長」の定義は次図のとおり。
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1on1を直近半年で経験した部下の割合は55.7%
1on1を「直近半年で経験した」部下の割合は55.7%だった。次いで、「以前は1on1を実施していたが直近半年では経験していない」部下が26.9%、「一度も1on1を経験したことのない」部下は17.5%と続く。
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また、1on1の実施方針と実施頻度の関係を見ると、「部下が上司に提案して実施した」は月2.8回、「上司が部下に提案して実施した」は月1.8回と、自発的に1on1を行う場合は回数が多い。他方、「会社の方針・義務で実施した」は月0.5回と最も少ない。会社の方針・義務で“仕方なく”やっている場合、回数が少なくなるということがわかる。
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上司・部下は1on1で「相手のほうが話す割合が高い」と互いに思っている
上司と部下それぞれに、1on1時に自分や相手がどれだけ話をしているかを質問したところ、上司は自分より部下が多く話していると感じているが(「部下の話す割合が高い」が42.5%、「私(上司)の話す割合が高い」が36.2%)、部下は自分より上司が多く話していると感じていた(「上司の話す割合が高い」が36.6%、「私(部下)の話す割合が高い」が31.4%)。
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部下に1on1の満足度について聞いたところ、「満足」が52.7%、「不満・どちらともいえない」が47.3%で、それぞれ半々となっている。
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1on1の課題は「面談について学ぶ仕組みがない」「効果が感じられない」
上司と部下に1on1に関して困っていることを聞くと、上司の第1位、部下の第2位に「面談について学ぶ仕組みがない」が入った。上司の第2位、部下の第3位には「上司が多忙で、面談のスケジュール設定が難しい」が入り、上司の第3位、部下の第1位に「面談の効果が感じられない」が入った。上司・部下ともに1on1について手探りのまま行われている実態が明らかになった。
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また、1on1をよくするために必要な改善点を質問したところ、上司・部下ともに第1位は「『人材育成』を重視する組織風土を作る」で、第2位が「上司の主な役割として『部下の育成』を位置づける」、第3位が「上司のコーチングスキルを上げる研修」と、第1位から第3位まですべて同じ項目であった。なお、第3位から第5位には、上司・部下ともに1on1に関連する研修が入った。
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人材育成を重視する組織風土は、1on1を通じた部下の成長にプラスの影響
人材育成を重視する組織風土のもとでは、部下の成長度が高い。「誰でも活躍しやすい環境」「仕事・ポジションの明示」「教育・訓練の手厚さ」に「あてはまる」と回答した部下は、成長度(10点満点)が7.2~7.4点と高く、「あてはまらない」は6.3点と、およそ1.0ポイントの差があった。
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上述した「誰でも活躍しやすい環境」「仕事・ポジションの明示」「教育・訓練の手厚さ」の要素が、1on1を通じた部下の成長にもプラスの影響を与えていることが確認された。部下が目標設定しやすく、学びの機会も豊富にあり、どのような従業員であれ活躍できるような人材育成を重視する組織風土のもとでは、1on1の効果も高まることを示唆している。
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1on1に関する部下の研修受講率は、上司より30ポイント以上低い
部下は「面談について学ぶ仕組みがない」ことに困っており、1on1をよくするには「人材育成」を重視する組織風土が必要と考えていた。そこで、1on1に関する研修として、「傾聴スキル」「コーチングスキル」の研修受講経験を見ると、部下の受講率は、上司よりも低く30ポイント以上の差があった。上司・部下それぞれに研修が役立つかを聞くと、上司・部下ともに約6~7割が「役立つ」と回答した。
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また、部下の1on1に関する研修経験の有無と成長の関係を見た。傾聴スキル「研修経験あり」は7.1点、「研修経験・自己研さんなし」は6.5点。コーチングスキル「研修経験あり」は7.1点、「研修経験・自己研さんなし」は6.5点と、「傾聴スキル研修」や「コーチングスキル研修」を受講した部下は、受講していない部下よりも成長度が高かった。
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1on1に関する自己研さんの有無と部下の成長の関係を見た。「面談に関するマニュアルを読む」「面談に関する本を買って読む」「面談に関する勉強会に参加する」といった自己研さんを行った部下は、それらの自己研さんを行っていない部下よりも成長度が高かった。
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「上司が本音を話している」と部下が感じることが、成長に最もプラスの影響
1on1時に「上司が本音を話してくれている」と部下が感じることが、部下の成長に最もプラスの影響を与えていた。次いで、日頃から上司が自分(部下)に対して配慮してくれている(自分のアイデアを尊重してくれる、自分の業務進捗をマメに確認してくれる、励ましてくれる)、加えて「上司が新たな視点を提供してくれる」と部下が感じることが、部下の成長にプラスの影響を与えていた。
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1on1時に上司より部下の話す割合が高いほうが、部下の成長度も高くなっていた。また、1on1時に「部下がテーマ設定」するは6.9点、「上司がテーマ設定する」は6.4点と、部下がその日に話すテーマを決めているほど、部下の成長度も高くなっていた。
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1on1の実施頻度別に、1回あたりの実施時間と部下の成長度を見た。最も成長度が高いのは、「月2〜3回以上」という高頻度かつ1回あたりの時間が「30分以上1時間未満」の1on1であった 。一方、最も成長度が低いのは、「月2〜3回以上」という高頻度かつ1回あたりの時間が「1時間以上」の1on1であった。1回あたりの時間が長すぎるのは、逆効果であることが示された。
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なお、調査の概要は次図のとおり。
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