「AIを使いこなせているか否か」が競争優位の源泉
入山章栄氏(以下、入山):2025年は「AIエージェント元年」とも言われていますね。従来は、ChatGPTやGeminiといった生成AIツールに逐一プロンプトを入力して利用していたのが、複数のAIエージェントが連携して自律的に複雑なタスクを処理することが可能になることが注目の理由です。
実際に、今年7月にはAWS(Amazon Web Services)がAIエージェント開発・運用基盤のリリースを発表したほか、AdobeもAIエージェントとその連携基盤の提供を開始するなど、AIエージェント関連のリリースが相次いでいます。「AIで仕事をラクにしよう」といった業務効率化のレベルから、企業経営やビジネスの在り方そのものに大きなインパクトを与える時代が到来しつつあります。
布川さんが率いるログラスもAIエージェントを扱うプレイヤーの一角ですが、AIエージェントが企業に与える影響をどのように捉えていますか。

布川友也氏(以下、布川):特に大きな影響が及ぶのが、経営層による意思決定のプロセスだと思います。従来よりも圧倒的かつ即時性の高い情報に基づいたデータドリブンな意思決定が容易になります。さらにデータの収集や分析などの定型業務をAIに代替させ、最終的な判断のみを人間が行うハイブリッドな意思決定モデルも確立できると思います。
このインパクトは強烈で、AIを使いこなす企業とそうでない企業との競争優位性が大きく開くことになります。むしろ、競争優位性という概念そのものが「AIを使いこなせているか否か」という意味合いに近付いていくのではないでしょうか。
だからこそ、これからの時代の企業はAIやAIエージェントの活用を前提とした組織体制を築く必要があると思います。実際に、ログラスでは今年から「AIオペレーションマネージャー」という新たな役職を設けました。簡単に言えば、既存の社内業務を構造化してAIに代替する仕事ですね。今後は、AI活用を前提とした組織の再設計が、さまざまな企業で進むのではないかと見ています。

AIが加速させる恐れがある「コンピテンシー・トラップ」
入山:以前、ログラス主催のイベントに登壇した際、「生成AI時代の経営企画はイノベーターになれ」とお話ししたことがありました。AIの基盤的技術であるディープラーニングは、いわば「自動的に失敗を減らす仕組み」ですから、生成AIやAIエージェントを活用していくと失敗のリスクが自然と排除されていきます。しかし、それでは企業が過去の成功体験に囚われすぎてイノベーションの芽を摘んでしまう「コンピテンシー・トラップ」と似た状況に陥ります。
▲Loglass経営企画サミット2025 レポート▲
だからこそ、これからの時代はリスクを取って挑戦するような活動は人間が担わなければいけません。つまり、両利きの経営における「知の探索」の領域ですね。私は、その役割を担うのが経営企画の役目だと思っているんです。こうした既存の職種の役割やミッションの変化が、今後、さまざまな企業で起こるのかもしれませんね。
布川さんは今後の経営企画の役割について、どのようにお考えですか?