「価値は?」「クレイジーか?」二度問う理由
社内で議論を重ねた末「それはクレイジーか?」と「それに価値はあるのか?」の二つをバリューに策定しました。

「それに価値はあるのか?」は、お客様視点で考え、課題の本質を見極め、現場の声と向き合いながら価値ある体験を届ける姿勢を示すものです。しかし、価値を追うばかりでは目の前のニーズに縛られて、イノベーションが停滞します。そこで「それはクレイジーか?」というもう一つの問いを置きました。この問いには常識を疑い、大胆な選択肢を探る美意識が表れています。この二つはどちらか片方だけでは成立しません。大胆に発想を広げつつ、必ず価値に立ち返る。両者を行き来する思考のサイクルこそが、私たちの成長の原動力なのです。
バリュー策定のポイントは、最初から標語を作ろうとしないことです。私は検討時、響きの良い言葉を考えることに時間を使ってしまい、遠回りをしました。まず「自分たちが真に大切にしていることは何か」「それが事業の発展にどう寄与するのか」をブレイクダウンしていくと、10個程度の要素に絞られます。それらをまとめて表現できる言葉を後から探すほうが、強固な軸のあるバリューになると実感しました。
不変のMPと見直すべきVV
ミッション、パーパス、ビジョン、バリューは、それぞれ役割が異なります。ミッションとパーパスは社会に対して自社が提供する価値の根本であり、社長が代わっても変わりません。変わるとすれば、会社そのもののが変わるときです。
一方で、ビジョンやバリューは定期的に見直す必要があります。事業フェーズや市場環境に応じて柔軟にアップデートし、現場の声や実績を反映させることで、企業は価値を持続的に生み出すことができるのです。
策定したミッション、パーパス、ビジョン、バリューは、全社会議などで繰り返し伝えるなど、社内外に向けて様々な方法で発信しています。伝え続けることで、メンバー全員が同じ方向を向きながら意思決定できるからです。
ミッション、パーパス、ビジョンの明確化は、採用や協業にも好影響をもたらしています。人事担当者が候補者に伝えるメッセージに一貫性が生まれたり、関係者に事業を説明する際の説得力が増したりと、メンバー一人ひとりの変化を感じているところです。
会社を経営する上で、自社の役割や存在意義を明確な言葉で示すことは重要です。自社がどのような価値を提供できるのか説明するためにも、理念や方向性は早期に定めるべきでしょう。そうすることで、やるべきことが自然と絞られ、戦略にも一貫性が生まれます。ミッション、パーパス、ビジョンは、会社を迷いなく前に進める原動力となり、仲間やパートナーを巻き込みながら未来を切り拓く力になるのです。