戦略畑とIT畑でキャリアを築いてきた二人
──まずはパネリストのお二人から自己紹介をお願いします。
清水:ミスミグループ本社の清水と申します。私はキャリアのスタートがアクセンチュアという会社で、そこに20年間在籍していました。最後はストラテジーグループの日本リードを務めていました。
清水:ミスミには社外取締役として4年関わった後、2024年から執行側に入り、現在はCIO(最高情報責任者)という役職に就いています。ただ、私は一貫して戦略畑の人間で、技術的な専門知識については、この後お話しされる樋口さんのほうがお詳しいかもしれません(笑)。今日は「戦略としてのDX」という視点でお話しできればと思います。
樋口:私は日本IBMに26年間在籍していました。当時は「社長と人事以外はすべて経験した」と自負していましたが、その後のキャリアで図らずもその両方を担うことになるとは、当時は想像もしていませんでした。
樋口:2019年にLINEグループのトラベル事業で執行役員 CDOに就任し、前職のベイシアグループではCDO兼CIOを務め、ベイシアグループソリューションズというIT新会社で代表も経験しました。現在はロート製薬におります。IT・小売・製造と、対岸を渡り歩きながら異なる立場の「景色」を見てきた経験を、本日はDXの文脈でお話しできればと思います。
+10ではなく×10のインパクトを目指すべき
──では最初のトピックに移りたいと思います。清水さんは戦略コンサルタントとして数多くの企業のDXを見てこられました。そんなお立場から「DXとは何か」を改めて定義いただけますか?
清水:一言で言うなら「自分たちが“何屋”になるのかを定義し直すこと」だと思います。DXはよく効率化のための手段として語られますが、それは本来インプルーブメント(改善)と呼ぶべきものです。
今、消費者は数十年前のスーパーコンピューター並みの処理能力を持つスマートフォンを手にし、SNSでつながっています。このような環境下で、最終消費者の購買行動を変革するレベルの取り組みでなければ、それをDXとは呼べないのではないでしょうか。
もしDXを社内の生産性向上のための取り組みと呼びたいのであれば、生産性の10倍向上を目指すべきです。「人員を10%減らしました」くらいのインパクトでビジネスモデルは変わりません。
──ちなみに、ミスミは自社を“何屋”と定義しているのですか?
清水:ミスミは戦略家集団で、ビジョンよりは市場を重んじる会社でした。しかし、私は「何屋になるのか」という問いの答えを経営者が示さなければダメだと考えています。なお、従業員のミッションは「モデル進化(既存のビジネスモデルを絶えず進化させること)」で、年率2桁成長を続ける原動力となっています。
──ありがとうございます。樋口さんの考えるDXの定義はいかがでしょうか?
樋口:私はシンプルに「経営そのもの」だと言っています。経営者の悩みは、常に変化し続けなければ生き残れないという点にあります。今の時代、デジタルやテクノロジーがない状態のほうが不自然です。DXを特別なものとして捉えるのではなく、変化し続ける経営の必然的な手段、あるいは経営そのものとして捉えるのが最も自然ではないでしょうか。
