非エンジニアでも業務アプリが開発できる環境
T-Copilotは次の3つのアプリで構成されている。

T-Copilot Assistants
Webベースのアプリケーションで、各プロジェクトに合わせたユースケースを生成AIチャットで検討可能にする。これにより従業員は「業務の特定の課題に対して、AIをどのように活用できるか」という問いについて、具体的なアイデアを得ることができる。
T-Copilot Teams
MicrosoftのTeams環境に統合された機能。日々の業務の中で気軽にAIが利用できる環境を提供する。これにより、日常的なコミュニケーションツールの一部としてAIが自然に溶け込むことを目指した。
T-Copilot Actions
社内のセキュリティ基準に則った形で、生成AI機能をAPIとして提供する。これにより「Power Automate」や「Zapier」など外部の自動化ツールなどとの連携を可能にし、より高度な業務効率化や新規アプリケーション開発を実現する。
「これらのアプリには『非エンジニアであっても自社のセキュリティ基準に則ったAI機能を活用できる』という思想が貫かれています」(山本氏)
さらに同社では、AI活用を推進するためのプラットフォーム整備も進行中。Microsoft 365 CopilotやChatGPT Enterpriseなどの生成AIツールを活用して、デザインやモックアップを簡単に作成できるようにしたり、コーディングAIツールを組み合わせることで、デモ版アプリを迅速に開発できるようにしたりしている。
「最終的には、これらのプロセスを経て開発された業務アプリを、本番環境で社内利用できるような枠組みを構築しているところです」(山本氏)
トレーニングが削減した1万6,737時間
トヨタコネクティッドがAIを全社的に浸透させる上で、最も注力した取り組みの一つが“AI-Ready”な人材を育成する「AX(AIトランスフォーメーション)トレーニング」だ。このトレーニングは、単にAIツールの使い方を教えるのではなく、従業員がAIを自身の業務にどう活かすかを考え、実行できる状態を目指して設計された。
AI-Readyな状態は、次の4つで構成される。

同社では、2の「自分の業務を言語化する」という部分に大きな課題があった。従業員が自身の業務をマニュアル化できておらず、特定の担当者しか知らない「暗黙知」も多かったからだ。この課題を解決するため、同社では業務棚卸し用のフォーマットを作成。ワークショップを通じて従業員が自身の業務を構造的に整理できるように支援した。
トレーニングプログラムは、全従業員が必須で受講する「レベル1」「レベル2」と、専門家向けの「レベル3以降」に分けられている。レベル2では、従業員がAIを活用して業務を改善した事例をひたすら共有し、それを自身の業務に落とし込むワークショップを実施。これにより、単なる知識の習得にとどまらず、具体的なアクションにつなげることを目的とした。さらに、これらの事例はユースケースの共有プラットフォームで共有され、全社的なナレッジとして活用されている。
取り組みの成果は出ているのだろうか?山本氏によると、AI活用の事例は301種類に達し、2024年度はAXトレーニングが削減した時間は1万6,737時間にも上る。
また、特筆すべき定性的な効果として、非エンジニアの従業員が自らChatGPTと対話をしながら業務改善のためのChrome拡張機能や業務アプリケーションを開発する事例が生まれている。従業員のAI活用に対する意欲が大幅に向上したことが明らかになった。