「イノベーション人材」が企業を持続的に発展させる
ケース3:新しい可能性を探すこと自体が「楽しい」という探求心
また、ある企業の新規事業部門長は「楽しいからやる、それだけです!」と笑顔で語ります。
彼女にとって、社外の様々な分野の人々と対話することは、純粋な知的刺激であり、何より楽しい時間なのだとか。未知の技術に触れ、「自社の製品と組み合わせたら、どんな新しいものが生まれるだろう?」と想像していると、アイデアは無限に広がっていくと教えてくれました。その知的好奇心を原動力とした活動が、思わぬ協業や新しいサービスの創出につながっています。

状況や動機はそれぞれですが、3名に共通しているのは、組織から明確に「やれ」と命じられたわけではないことを、自らの強い想いに従って続けている点です。会社の未来への危機感、誰かの役に立ちたいという貢献意欲、あるいは純粋な探求心。そうした内発的な動機に突き動かされ、彼ら・彼女らは、普段は話しかけにくい役職の相手にも、まったく異なる部署の担当者にも働きかけ、時には思いもよらないところから協力者を見つけ出してきます。
このような、組織に新しい風を吹き込み、停滞を打ち破る「イノベーション人材」なくして、企業の持続的な発展、すなわち「お客様との約束を守り続けること」は望めないでしょう。

「自律自走」できる人材も、疲れて止まるのが当然だ
自らの意志で「頼まれてもいないこと」を始め、推進する。多くの企業が従業員に求めるように、変化の激しい時代において、この「自律自走」の能力は不可欠です。
しかし、「自律自走」には困難がともないます。特に、不確実で短期的に結果が出にくいイノベーションの領域では、その傾向は一層顕著です。
想像してみてください。あなたは、会社の未来のために必要だと信じる活動を、周囲の無関心や抵抗に遭いながら、たった一人で進めています。新しいアイデアを提案しても、「前例がない」「失敗のリスクがある」と一蹴される。関係部署に連携を求めても、「多忙」を理由に消極的な反応しか得られない。心血を注いだ企画も、上層部の理解を得られずに日の目を見ない。
このような状況が続けば、どれほど高い志があっても、疲弊してしまうのは当然です。燃え盛っていた情熱の炎も、少しずつ弱まっていくでしょう。「なぜ自分だけがこんな苦労を」「この活動に本当に意味はあるのか」。そんな疑念が頭に浮かんでも不思議ではありません。

組織によっては、「自律自走」と「放任」の境界が曖昧なこともあります。「本人がやりたいと言っているのだから」と、必要なリソースや支援を提供せず、結果的に孤立させてしまう。自律自走する力は素晴らしい能力ですが、それも無限ではありません。では、足を止めそうになっているあなたが再び歩き出すためには、何が必要なのでしょうか?
