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新規事業を成功に導く“デザイン”の力

「ビジョンプロトタイピング」で未来を共創する。新規事業の「対話のズレ」を埋めるデザインの力

第4回

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名著『VISUAL THINKING』に学ぶ、未来を「描く」力

 デザイナーが優れた「翻訳者」となるために備えている能力の一つが「見える化」のスキルだとお話ししましたが、この「見える化」のビジネスにおける重要性を深く掘り下げている書籍として、『VISUAL THINKING - 組織を活性化する、ビジュアルシンキング実践ガイド』(Willemien Brand 著)をご紹介します。

 本書によれば、ビジュアルシンキングとは「複雑な情報やアイデアを図や絵で表現し、関係者の間に共通理解を生み出す手法」です。言語だけでは伝わりにくい内容も視覚化することで直感的に把握でき、議論や合意形成をスムーズに進められるとされています。私なりに、本書のポイントを大きく二つにまとめてみました。

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チームでの共通理解をつくる

 一つ目は、これまでお話ししてきたことと重なります。ビジュアルシンキングは、複雑な情報を整理し、誰もが理解できるかたちに変換するための思考法です。人は本来、視覚的に情報を処理する力が高く、文字よりも図や形によって構造や因果関係を瞬時に把握できます。線や矢印、シンボルなどの基本的な要素を使って関係性を描き出すだけでも、複雑な状況の中にあるパターンや本質的な課題が明確になり、議論の焦点が定まります。

 この「複雑さをシンプルにする」プロセスは、チームでの共通理解を生み出す大きな力となります。図やスケッチは、立場や専門の異なる人々の間に直感的にわかりやすい視覚言語をつくりだし、言葉だけでは伝わりにくい考えを共有するための架け橋となります。描きながら話すことで、認識のズレや誤解を早期に発見でき、チーム全体の思考を可視化しながら議論を深められます。

未来を描いて共創する

 二つ目に、ビジュアルシンキングは、現状を整理するだけでなく、未来を構想するための手法としても大きな力を発揮します。まだかたちになっていないアイデアや理想像を、絵やストーリーとして視覚化することで、関わる人々はそれを共有し、共感を育み、共創を行うための原動力を得られます。本書では、ストーリーボードやマップ、キャンバスなどのツールを使い、抽象的なビジョンを具体的なイメージへと翻訳する方法が紹介されていますので、ぜひ一度読んでみてください。

 こうして描かれた未来像は、文字だらけの計画書よりもはるかに人の感情に訴え、行動を促します。言葉では表しきれない想いや情熱を可視化することで、チームの方向性を一致させ、創造的なコラボレーションを生み出す起点となるのです。未来を描くことは、可能性を「見える化」することです。見えなかったものを共有できるようにすることで、人や組織の創造性を最大限に引き出す。これがビジュアルシンキングの大きな価値と言えるでしょう。

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共感を軸に未来の光景を描く「ビジョンプロトタイピング」

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この記事の著者

門田 慎太郎(モンデン シンタロウ)

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