KDDIが4,000 ID移行を決断。AIが実現した「1.5人での大規模ID管理」
続いて、KDDI Digital Divergence Holdings(KDH)代表取締役社長の木暮圭一氏が登壇。KDDIグループのアトラシアン製品大規模導入と、AI時代を見据えたクラウド移行の実践知を語った。
KDDIグループの活用は2013年に遡る。5名・25 IDで始まった利用は、現在700名体制・4,000 ID規模に成長。長年Data Center(オンプレミス)版を利用してきたが、現在クラウド版への移行プロジェクト最終段階にある。
木暮氏は、「過去3回ほど移行を検討したが、うまくいかず、その難易度は高かった」と率直に語った。
今回4,000 IDの大規模移行に踏み切れた「最後の決め手」はAIの登場だった。クラウド版でのみ提供される「Atlassian Rovo」の活用が期待できるためだ。また、Slackなど既存SaaSとの連携で、Rovoが「翻訳役」としてシームレスにつなげる点も後押ししたという。
クラウド移行とAI活用は、KDDIの業務に具体的な成果を生んでいる。木暮氏は3つの事例を紹介した。
 
第一に、大規模サービス運用の半自動化だ。JiraやConfluenceをワークフローに組み込み、従来Excel管理だったアラームや問合せを一元化。開発者への連絡を自動化し、「アラーム当たりの対応工数を50%削減」を実現しつつある。
 
第二に、Confluenceのホワイトボード機能の活用。AI機能で「会議内容整理時間が、30分/回削減」されたという。「付箋でのワークショップ後、AIが自動でカテゴライズ・分類してくれる。これが欲しいからクラウド版にしたいという部門もあった」と語った。
 
第三が、Jira Service Management (JSM) と Rovo によるID管理の劇的自動化だ。サポートサイトをJSMで構築し、ID登録フローを自動化。「4,000人超のQ&A対応を1.5人月で対応」していると語る。Data Center版の3人月から「50%のオペレーションコスト削減」を達成。RovoによるQA回答案自動生成も貢献し、迅速な回答が高い顧客満足度につながっている。
AIは「業務組み込み」こそ価値が出る。木暮氏が語る「温かみのあるAI」という哲学
木暮氏は、AIは個人利用ではなく、アジャイルな組織文化のもとで業務プロセスに組み込んでこそ真価が発揮されると強調。AIトレンドはLLMから「AIエージェント」、さらに「アプリケーション・プラットフォーム」へと移っていると分析し、「アトラシアン製品もここに向かって進んでいるので、しっかり使っていこうと思う」と期待を寄せた。
木暮氏は、AI活用の哲学として「温かみのあるAI」を挙げた。
「AIには冷たいイメージがあるが、我々のテーマは『温かいAI』を使い、いかに楽しく共存できるかです」(小暮氏)
AI推進のポイントは「速さ」や「柔軟性」だけでなく、「現場への溶け込み」、すなわち「自然な使いやすさ」や「あたたかみ」であると力説する。
セッションの最後に「AIに仕事が奪われる」という不安に対し、木暮氏は「AIが皆様を忙しくする」と独自の見解を示した。
「単純作業はAIがするが、人間はより『もっといいもの』と要求していく。いい意味で忙しくしてくれて、日本の発展に寄与するのでは」(小暮氏)
AIを恐れず、業務に自然に溶け込むパートナーとして共存していく。KDDIの実践は、日本企業がAIと向き合ううえでのヒントを示す。

 
                    
                     
                    
                     
                    
                     
                    
                     
                    
                     
                    
                     
                                    
                                     
                                    
                                     
                                    
                                     
                        
                         
                        
                         
                        
                         
                    
                     
                    
                     
                    
                     
                    
                     
                  
                   
                  
                