帝国データバンクは、全国2万5,111社を対象に、「海外進出」に関するアンケート調査を実施した。
企業の海外進出率は18.3%、コロナ禍から6ポイント低下
現在、自社が海外に進出しているかどうか尋ねたところ、生産拠点や販売拠点など直接的に進出している企業は9.5%、業務提携や輸出など間接的に海外進出している企業は13.8%(複数回答、以下同)。直接・間接のいずれかの形で海外進出をしている企業は18.3%にとどまり、「進出していない」は78.7%と8割近くにのぼった。また、コロナ禍前の調査では、海外進出している企業は24.7%だったが、コロナ禍や地政学的リスクなどを受け6ポイント以上低下。ただし、従業員数「1,000人超」の企業では「海外進出あり」が59.0%にのぼり、企業規模が大きくなるのに比例して海外ビジネスに対する取り組み姿勢が高く表れた。

海外事業の内容を見ると、直接的な進出では「現地法人の設立」が4.8%で最も高く、次いで、支社・支店などを含む「生産拠点」(4.0%)や「販売拠点」(3.8%)、M&Aなどの「資本提携」(1.1%)が続いた。他方、間接的な進出では、商社や取引先を経由した「間接的輸出」(7.9%)がトップ。以下商社などを経由せず直接海外企業などと取引している「直接輸出」(5.1%)、生産委託などの「業務委託」(3.8%)、技術提携などの「業務提携」(1.9%)が続いた。

海外進出の重点地域、「生産」「販売」ともにアジアが上位
直接・間接のいずれかの形で海外進出をしている企業1,908社に、現在海外進出している国・地域の中で生産拠点として最も重視する進出先はどこか尋ねたところ、「中国」が16.2%で最高。以下、「ベトナム」(7.9%)、「タイ」(5.3%)、「台湾」(2.7%)などアジア諸国・地域が上位を占めた。2019年調査と比較すると、上位5カ国・地域の顔ぶれに変化はなかったが、「中国」の重要度は大きく低下。
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他方、販売拠点として最も重視する国・地域でも、「中国」が12.3%でトップとなり、次いで、「アメリカ」(8.2%)、「タイ」(6.2%)、「台湾」(5.3%)、「ベトナム」(5.2%)が続いた。同様に2019年調査と比較すると「中国」の落ち込みが目立つ一方で、「台湾」の存在感が増しているほか、「インド」(2.5%)を重視する企業が増加していることがうかがえる。
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今後の進出先、アジアの巨大市場がカギ。ベトナム、インド、インドネシアが重要度増す
今後、自社が重視する進出先として検討する可能性がある国・地域について尋ねたところ(上位1~3位までの順位付け)、生産拠点としては、「ベトナム」(4,605pt)がトップとなった。前述した「最も重視する国」でも2位になっていることから、生産拠点としての高いポテンシャルがうかがえる。次いで、「中国」(2,707pt)、「タイ」(2,138pt)、「インドネシア」(1,806pt)、「台湾」(1,450pt)、「インド」(1,259pt)が上位に並んだ。
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他方、重視する販売拠点では、米国による関税交渉の影響はあるものの、「中国」(3,130pt)、「アメリカ」(3,043pt)が同水準で高かった。以下「ベトナム」(2,462pt)や「台湾」(2,223pt)、「タイ」(1,959pt)、「インド」(1,608pt)、「インドネシア」(1,469pt)などが注目されている。
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生産拠点、販売拠点ともにGDP成長率が高く、安定したビジネス環境が望める「ベトナム」や、消費市場としても世界最大の人口を誇る「インド」、ASEAN加盟国でGDPが最も高い「インドネシア」の期待感が高まっていると言える。
米国の関税交渉、海外進出に「非常に大きな影響」13.5%
トランプ政権が主導する米国による、各国に対する関税交渉の結果は、日本企業の海外進出にどのような影響があるか尋ねたところ、進出先の見直しや撤退の影響など「非常に大きな影響がある」と見込む企業は13.5%。コスト増や現地調達の見直しなど「ある程度の影響がある」は42.5%と多数を占め、「影響は限定的」は16.5%だった。他方、「ほとんど影響はない」は4.4%にとどまり、多くの企業で海外進出に対して何かしらの影響が生じると認識。

