【成功事例】JVモデル「Dexterity」と代理店モデル「Plume」の進化
小宮:事業開発の進化について伺います。初期は「代理店モデル」だったとのことですが、現在はどのような連携スタイルをとっていますか。
内村:現在の事業開発には、大きく分けて「JV(ジョイントベンチャー)設立による深いコミットメント」および「グループ会社を巻き込んだ高度な代理店モデル」の2つの成功パターンが出てきています。
JVとして象徴的な事例が、物流倉庫向けロボットAIを手掛けるユニコーン企業「Dexterity(デクステリティ)」との取り組みです。2024年6月には合弁会社「Dexterity-SC Japan」を設立しました。
小宮:DexterityとのJV設立は、単なる販売提携とは何が違うのでしょうか。
内村:背景にあるのは、日本の「物流2024年問題」です。トラックドライバー不足や荷待ち時間が深刻化する中、Dexterityのロボットは「トラックのコンテナ内に入り込み、テトリスのように荷物を自動で積み込む」という、これまで人手に頼らざるを得なかった難作業を自動化できます。
これは単に製品を売るのではなく、RaaS(Robotics as a Service)として、物流現場のオペレーションそのものを変革する事業です。日本市場向けにローカライズし、SGホールディングスなどと実証実験を重ね、事業主体として責任を持って普及させるためにJVという形を選びました。
小宮:もう一つの「高度な代理店モデル」とはどのような事例ですか。
志津:米国Presidio Venturesが出資した「Plume(プルーム)」の事例が挙げられます。Plumeは宅内Wi-Fi環境を最適化するソリューションを提供していますが、この日本展開において、住友商事グループのJ:COMおよびSCSKが連携しました。
J:COMでは「Wi-Fiがつながりにくい」というカスタマーサポートへの問い合せに対する対応コストが課題でした。そこでSCSKがPlumeの代理店として技術検証や保守を担い、J:COMが「メッシュWi-Fiサービス」として顧客に提供するスキームを構築しました。結果、顧客満足度が向上し、サポートコストも削減されるという、投資先・グループ会社・顧客の「三方よし」を実現しています。
小宮:CVCが起点となり、グループ全体のアセットを活用している好例ですね。
内村:さらに最近では、「0→1 Next(ゼロワン・ネクスト)」という社内起業制度とも連携し、介護DX事業「FIKAIGO」のような新規事業も生まれています。CVC投資だけでなく、社内からの事業創出も含め、「事業プロデュース」を行う機能が強化されています。
日本企業とエコシステムへの提言
小宮:内村さんはイスラエル拠点の立ち上げも経験されましたが、日本企業がグローバルCVCを成功させるためのポイントは何でしょうか。
内村:非常にシンプルですが、「ご縁」と「ネットワーク」です。
日本から駐在員を派遣して「頑張ってネットワークを作れ」と指示しても、大抵はうまくいきません。成功の鍵は、最初から現地に強力な人脈を持っている「エキスパート」をチームに組み入れることです。私の場合は幸運なご縁がありましたが、そうしたキーマンと共に立ち上げることが、成功への最短ルートです。
小宮:最後に、日本のスタートアップや大企業を含めたエコシステムに対するメッセージをお願いします。
内村:日本のスタートアップは、技術力や基礎的な知性はシリコンバレーやイスラエルと比べてもまったく遜色ありません。しかし、視座が国内に閉じていて、構想が小さくまとまってしまっているケースが多いのが残念です。世界で勝負するなら、「自分のアイデアと同じことを考えている競合が世界に少なくとも10社はいる」という前提に立ち、最初から世界市場を見据えて会社を立ち上げてほしい。
志津:私も同感です。我々のような大企業のグローバルCVCの役割は、海外スタートアップの日本市場参入支援のみならず、国内スタートアップに対し、資金だけでなく海外の販路やネットワークを提供し、一緒に日本発の技術を世界へ連れていくことだと考えています。目線を高く持つスタートアップと共に、日本と世界の架け橋となる活動を、これからも続けていきます。
小宮:本日は貴重なお話、誠にありがとうござました。

