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新規事業を成功に導く“デザイン”の力

「つくる力」の民主化でデザイナーは不要になる? テクノロジー×デザインで切り拓く事業開発の新境地

第5回

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技術を体験へと“翻訳”する。Google GlassとRay-Ban Metaの明暗

 改めて私たちが「mitate」プロジェクトで伝えたかったのは、AIや3Dプリンターなどの先端技術はあくまでツールであり、それをどのように応用し、人々の生活の中で価値のあるものを生み出すのかが重要だということです。

 この視点は、事業開発の現場でも極めて大切なことです。テクノロジーに注目が集まるあまり、その活用自体が目的化してしまうと、本来届けたかった体験や意味の核が曖昧になってしまう危険性があります。

 そのことを、Google社が開発した「Google Glass」と、Meta社とEssilorLuxottica社が共同開発した「Ray-Ban Meta」という2つのスマートグラスのデザインを例に見てみましょう。

 2013年に登場したGoogle Glassは、当時としては先進的なAR技術を搭載したメガネ型デバイスとして注目を集めました。視界に情報をオーバーレイ表示できる技術は革新的でしたが、結果として一般市場への普及には至りませんでした。見た目の違和感やプライバシーへの懸念、そして「何ができるのか」が直感的に伝わりにくい体験設計上の課題が、ユーザーに受け入れられなかった要因と言えるでしょう。

 一方、2023年に登場したRay-Ban Metaは、同様にカメラや音声アシスタントを搭載していますが、その設計思想はまったく異なります。Ray-Banという親しみやすいブランドと提携し、日常生活の中で自然に身につけられるスタイルを実現。さらに、友人や家族と「シェア」するといった具体的なユースケースにフォーカスし、現代のユーザーのライフスタイルに溶け込む体験を提供しています。

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 この2つの事例から見えてくるのは、テクノロジーの優劣ではなく、その「翻訳力」の差ではないでしょうか。Google Glassが技術視点で「できること」を提示したのに対し、Ray-Ban Metaは生活者視点で「使いたいこと」に寄り添ったとも言えるでしょう。

 どんなに高度な技術も、それが人の生活にどう結びつき、どんな体験や意味を持つかが明確でなければ、ユーザーに届くプロダクトにはなりません。デザイナーは技術と人との間に立ち、感性と理性を行き来しながら、技術を人の体験へと翻訳する。その「橋渡し」の役割が、ますます重要な時代となってきています。

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AIには到達できない、人間ならではの「仮説推論(アブダクション)」

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この記事の著者

門田 慎太郎(モンデン シンタロウ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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