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新規事業を成功に導く“デザイン”の力

「つくる力」の民主化でデザイナーは不要になる? テクノロジー×デザインで切り拓く事業開発の新境地

第5回

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 AIやロボティクスの進化は、モノづくりのプロセスを根本から変えつつあります。生成AIや3Dプリンターなどの普及により、かつて専門技能を要した工程が「誰でも扱えるもの」となり、事業開発における仮説検証のサイクルは劇的に高速化しました。こうした技術が「人間にしかできない」作業を代替していく中で、今改めて問い直されているのが「人間の役割とは何か」という根源的なテーマです。技術が高度化するほどに浮かび上がる、人間にしか担えない価値とは何なのか。連載最終回となる今回は、事業開発の現場視点からテクノロジーとデザインの関係性を掘り下げ、これからの時代における私たちの働き方と価値創造の行方を探ります。

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テクノロジーによる「つくる力」の民主化がもたらすもの

 みなさんも既に身近なこととして感じているのではないかと思いますが、生成AIやノーコードツール、3Dプリンターなど、近年登場している様々なテクノロジーは、これまで専門的なスキルや経験が求められていた領域にも、より多くの人がアクセスすることを可能にし、モノづくりの可能性を大きく広げています。

 たとえば、生成AIを使えば高度なビジュアルやテキストを短時間で生み出せるため、事業開発の初期段階でコンセプトスケッチやプロトタイプのラフ案をすぐに具現化し、検証できます。ノーコードツールがあれば、エンジニアリングの知識がなくてもアプリやWebサービスのプロトタイプを自分で組み立てられます。3Dプリンターを使えば、複雑な形のプロダクトを一晩で造形し、翌日には手に取って確認することさえ可能です。

 こうした技術革新によって、「まずはつくってみよう」という実験的なアプローチが、より気軽に、低リスクに選択できるようになってきました。結果として、アイデアを形にするハードルが下がり、新規事業における仮説検証のスピードや柔軟性の向上にもつながっています。

 注目すべきは、こうした技術が「つくる力」そのものを民主化し、以前は特定の専門職だけが担っていたアウトプットも、チームのあらゆるメンバーが形にできるようになってきたことです。では、みんなが「つくる力」を持てるようになった今、デザイナーの役割は必要なくなるのでしょうか? テクノロジーの進化は、デザイナーの仕事を奪う脅威となるのでしょうか?

 私はそうではないと思っています。むしろ、デザイナーにとって重要なのは、これらの技術を「脅威」と見るのではなく、「拡張」として捉える視点です。創造性や判断力といった人間ならではの力を、より高め、支えてくれる存在として、ともに働けるか。そこに、これからの「つくる力」の新しいあり方が見えてくるのではないでしょうか。

次のページ
事例にみる、AIと3Dプリンターによる創造性の拡張

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この記事の著者

門田 慎太郎(モンデン シンタロウ)

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