自社がナンバーワンになれる市場を創り出せ
──ここで改めてお聞きします。カテゴリー戦略とはどのようなものなのでしょうか?
舘川(suswork):カテゴリー戦略とは、競合と争うのではなく「自社がナンバーワンになれる市場=カテゴリー」を創り出す戦略です。
舘川(suswork):人は商品を選ぶとき、ブランドや事業ではなくカテゴリーから思い浮かべます。たとえば「ビールを飲みたい」という場合、銘柄やブランド名ではなくカテゴリーを思い浮かべ、その後に銘柄やブランドを選ぶイメージです。「〇〇=TOKIUM」という構図を顧客の脳内に作ることが、ブランド選択の最短距離になります。
──比較的新しい概念ですよね。
舘川(suswork):海外ではスタートアップから大手グローバルカンパニーまで、あらゆる企業の成長戦略として非常に注目されています。日本でも体系化こそされていませんでしたが「スキマバイト」というカテゴリーを創出したタイミー様の事例などは、認知度が高いと思います。既存の「アルバイト」という枠を飛び出し、新しい課題解決のカテゴリーを定義した瞬間に、市場の注目度と成長スピードが劇的に変わります。
“今”ではなく“将来”の人手不足が新カテゴリー創造の種に
──TOKIUMにおけるカテゴリー戦略の立案プロセスについて教えてください。
舘川(suswork):まず初めに最も重視したのはカテゴリーインタビュー(カテゴリー戦略の策定に向けたインタビュー)です。東京や地方の中堅・大手企業の経理担当者など10名以上に対し、徹底的なヒアリングを繰り返し行いました。ここで重要なのは「人手不足」「システムがうまく導入できない」といった表面的な声(顕在課題)ではなく、その奥底にある潜在課題を探り当てることです。
──インタビューからどのような発見がありましたか?
舘川(suswork):驚いたのは、現時点で「人手不足でどうしようもなく困っている」という方は半分くらいで、もう半分の方はそれほど困っていませんでした。しかし、ほぼ全員が共通して抱えていたのは「いつか人手が不足したらどうしよう」「属人化した業務知見を継承できないかもしれない」という、将来に対する強い不安感だったのです。
松原(TOKIUM):これにはハッとしました。今の人手不足を救うなら人材派遣が正解ですが、将来の不安を解消するなら「システムが勝手にマニュアルを生成する」「AIが勝手に判断してくれる」という方向性が刺さるわけです。この「将来不安」というピースが、AIエージェントというカテゴリーにピタリとはまりました。
──当初は「プロ経理」というカテゴリー案もあったそうですね。
舘川(suswork):はい。人が強みのTOKIUMなら、経理のプロが伴走する「プロ経理」という打ち出し方もありだと当初は考えていました。しかし、松原さんが日々お客様と会う中で感じ取った「AIへの期待値の急上昇」も受け、市場をけん引できる可能性がより高い「経理AIエージェント」へと舵を切りました。
松原(TOKIUM):私は社内で最も多くのお客様と会っている自負があります。インタビューや商談など、直接お会いして聞く情報にこそ価値があると思うからです。お客様がAIに対して「何ができるの?」と身を乗り出してくる感覚を肌で感じていたため「まだ誰も見つけていない経理AIエージェントのカテゴリーを今すぐ取りに行こう」と決断しました。

