コーセー絶好調の理由は「爆買い、雪肌精のロングヒット、海外ブランド」だけではない

コーセー 経営企画部長 原谷美典氏インタビュー

訪日観光客による爆買い、雪肌精などのロングセラー製品、ジルスチュアートなど海外ブランドなど、多くのヒットが好業績のコーセーを支えている。そうした商品の成功はあくまで結果で、数年来の経営改革によるものだと経営企画部長 原谷美典氏は語る。2011年の震災以降、停滞から攻めに転じた同社の改革を牽引したのは、同族企業としての意思決定のスピードにある。

[公開日]

[取材・構成] 京部康男 (Biz/Zine編集部)

[タグ] 競争戦略 マーケティング 事業開発 企業戦略 M&A

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課題としてあった“返品”という構造問題

株式会社コーセー 経営企画部長(兼)広報室長 原谷美典氏

コーセーの業績が好調だ。訪日観光客による爆買いなどによる商品販売が堅調なことがその理由であることは、ある程度察しがつく。しかし業界トップの資生堂の停滞が語られる中、コーセーはなぜここまで堅調なのか?経営企画部長の原谷氏に、まずその理由を聞いたところ、慎重かつ控えめな言葉が返って来た。

たしかにインバウンドという需要が化粧品業界に恩恵を施しているというのが、一部の要因です。ただ手前味噌ではありますが、当社に関しては、ここ数年来の自助努力の結果と捉えています。現社長(代表取締役社長 小林一俊氏)は、4代目になり、創業者の孫にあたります。創業者の薫陶を受けた人間が、上層部だけになったにも関わらず、逆にオーナーシップの強みが出てきたのではないかと思います。就任したのは2007年の6月で、実は創業以来初めて売上げを落とすという非常に厳しい時期をくぐっているのです。そんな中で、目の前の業績だけを追うのではなく腰を据えてやってこれたのは、サラリーマン社長ではなくオーナー社長だったからではないでしょうか。(原谷氏)

売上だけではなく収益率も高い。実は化粧品業界には、収益の数字の面で構造的な問題があった。メーカー出荷と店頭売上げの差が、返品となって収益を圧迫することだ。業界として返品の処理を当然視する風潮や慣例がある中で、コーセーは「売れ残りは悪」という発想で、返品の損失も原価管理の一環として削減努力をしてきた。こうした収益に対する厳しい姿勢は、店頭消化よりも流通への出荷を重視する「お客様(消費者)不在」の姿勢、ひいては一時期の市場変化への認識の甘さへの反省からだという。

ドラッグストアの出店が相次いでいた時期、出荷という目先の売上の伸びだけを見て良しとしていたことへの反省があります。無理な納品もいつかは返品となって戻ってきますし、過剰に店が増えることで撤退も出てきます。当然、出荷と店頭消化の乖離による返品がメーカーの収益を圧迫するという問題に直面したのです。(原谷氏)

コーセーをはじめ化粧品業界の大手メーカーは、系列の販売会社が店舗と直接契約をおこなう。長年にわたり、お店に対して、美容スタッフを派遣し、店頭の販促などもメーカーが支援する「制度品」という仕組みで成長してきた。しかし、こうした美容スタッフによるカウンセリングや販促のノウハウは、ドラッグストアなどの量販店でのセルフ販売やネットでは通用しにくくなってきた。このことが明確になってくる中で、コーセーは着実な打ち手を講じてきた。

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