意識改革、機構改革、市場セグメント、成功法の戦略
収益改善はかなり厳しくおこないました。原料や資材調達面での原価低減や、間接費用削減、人の生産性向上はもちろんですが、大きかったのは営業に「売上」ではなく「収益」の意識を持たせ、返品を営業スタッフの評価のマイナス要素として組み入れたことです。(原谷氏)
メーカーの営業は長年、流通との商談で、より多くの注文を取ることが高く評価されてきた歴史があった。その慣例を脱却し、店頭でお客様に買っていただくことが営業の仕事であることへの意識改革をおこなったのだ。組織や体制面でも改革を押し進めた。支社と支店の深い階層に分かれていた営業体制をスリムにし、さらに、受注体制も一元化し、自社物流をアウトソーシングした。
同じぐらいの売上でもっと合理的にやっている外資メーカーなどを参考にしながら、見直していきました。ブランド事業部の役割を明確に切り分けたのも一つの大きな改革です。例えばマス市場向けの商品については、CMを打って、幅広いお客さんに買っていただく。典型的なのは雪肌精です。一方で、長年我々の一番強みとしてきたカウンセリング型の商品であるコスメデコルテなどは、そのブランド戦略の推進体制を明確に分け、それぞれの強みに特化した事業部にしたのです。(原谷氏)
改革としては極めてオーソドックスで、セグメント、ターゲティングなどのマーケティングの基本を踏襲するというものだ。コスメデコルテをはじめ、カウンセリング型の商品は専門店、百貨店に特化し、限られた販路で展開。「コーセー」の名前よりもブランドの特徴を前面に出し、メーカーや販社ではなく事業部のコミットを強くした。一方、雪肌精などのコンシューマーブランドには、テレビコマーシャルなどのマスの展開を強化した。2011年の震災の一年余りも含めた「守りの改革」を経て、その後攻めに転じた。ちょうどその時期から、訪日観光客からの評判が追い風となる。
そして、もうひとつ特筆すべきなのが、海外ブランドとの提携やM&Aの成功である。この面でもトップの資生堂が海外の大型買収の重みにあえぐ中、ジルスチュアートなど、コーセーの名前を冠さないブランドが成長している。この判断でもトップの意思決定の重要性を原谷氏はあげる。