新しい民主主義が作り出す世界の調和を目指す経済
地球規模の制度や機構は、現在の延長線上に出現する。まず国連が土台になり、国連憲章が地球憲法に引き継がれ、地球議会が各国のGDPや軍事予算などを定めるようになる。そうして、世界を混沌ではなく秩序へ導いていくと『21世紀の歴史』でアタリ氏は語っている。講演では、日本の現状に置き換えて、以下のように語った。
例えばTPPもひとつです。これも大きな法の統治へとつながるものになります。そして気候変動の回避のためにCOP21が2016年にありますが、世界の注目が集まっているということが世界の団結、法の統治につながる動きだと思います。
世界的な統治が行われるような民主主義の形態、それをアタリ氏は「超・民主主義」と呼ぶ。その担い手は、市場経済の暴走によって脅かされた社会生活や労働環境を拒絶し、連帯と利他性を基礎にした市場経済を作るクリエイター集団だ。
この集団が所属するのは、現存するものとしては、WWF、国境なき医師団、グリーンピースなど、世界の調和を重視する企業や組織だ。こういった企業がいずれ、都市部の管理、教育、医療、貧困撲滅、環境保全、女性保護など様々な分野で現れることで、新しい民主主義の基盤が整っていく。
とても重要なことは前向きで肯定的な社会をつくるということです。そのような社会は次の世代に対して責任を持つ社会です。それが出来れば大きな進展が望めます。子供を育てるときに自分自身を子供のために犠牲にしますよね。利己的にではなく、利他的に考える。こういった行動をとるのは責任があるからです。
市場経済は常にそれを保障する制度や機構とともに育ってきた。ただ21世紀という時代はそのバランスが失われようとしている時代でもある。しかし、経済と民主主義のバランスを生み出すのは、利己的な豊かさではなく、地球の調和を望む企業や人々だ。人間に宿る良心がその鍵になってしまうのは、心もとないようにも思える。しかし、だからこそ一人一人が未来の担い手であるということでもある。まずは、世界市民としての意識、それが重要になるだろう。
ワークスアプリケーションズ主催「COMPANY Forum2015」セミナーレポート
■記事:
Google X創設者が語る、人工知能が変える「働き方」と「学び方」の未来
大前研一氏が語る、「日本発、世界で通用するイノベーション」の作法