ROICツリーによる「現場ゴト化」とは
池側:全社KPIとして掲げられているROIC(投下資本利益率)について、現場の日常業務(オペレーション)へどのように落とし込んでいるのでしょうか。
染宮:ROICを経営の軸に据えるにあたり、事業部ROICを製品群別に分解し、さらに「製造リードタイム」「不良率」「在庫計画遵守率」「売価・原材料費」といった現場がコントロールできる具体的な現場KPI(経営KAI)へとカスケードダウン(ブレイクダウン)しました。
また、事業ごとのハードルレート(WACC)を設定し、事業別ROICとの差である「EVAスプレッド」のランキングを可視化して事業部長に提示しています。なお、過去の買収に伴う「のれん」は現場の努力では動かせないため、全社評価用(のれん込み)と現場評価用(のれんを除く投下資本ベース)の2種類のROICを使い分けて評価しています。
財務経理ビジネスパートナーによる事業部長との対話と参謀機能
池側:現場に入り込む「財務経理BP」が、単なる「事業部長の何でも屋」にならず、客観的な財務規律を保つための体制上の工夫はあるのでしょうか。
小宅:事業部長に寄り添うことと、その意向に沿うだけになることは違います。財務経理BP部の人事権はCFOにあり、事業部長とCFOの双方にレポートラインがあります。その上で大切なのは、共通の財務数値や判断基準を基に、本社側と事業部側が同じ目線で事業の状況を捉え、議論できる仕組みを整えることです。投資計画の妥当性や低利益製品への対応について、BPは事業部長とともに検討しながら、本社の目線も持って財務面から必要な提言を行い、事業部長の意思決定を支えています。
染宮:かつては予算や計画の審議を、本社のCxOと当該事業部長・スタッフだけで個別に行っていました。しかし2022年からは、全事業部長が同席して互いの計画審議を傍聴し、議論し合う場に変えました。最初は相互不可侵の雰囲気があったものの、事業部間での議論が進むにつれて他事業部へのアドバイスや全体最適の視点が育ち、経営層全体の「稼ぐ力」に対する意識が高まりました。



