「攻めと守り」を両立し、変革を促すAIの実装力
企業や自治体がAI格差を乗り越え、競争優位を築くためには何が必要か。チェンジHDは、単なるAIツールの導入ではなく、業務プロセスや組織文化に変革をもたらす「実装力」こそが重要だと提唱する。
同社は2003年の創業以来、一貫して「人を変え、組織を変え、日本を変える」というミッションを掲げてきた。日本の大手IT企業向けに何十万人ものエンジニアを育成してきた実績や、全国1,700以上の自治体とのネットワークなど、長年にわたり現場に密着して培ってきた「実装力」と「伴走力」が同社の最大の強みである。
福留氏は、同社の戦略を「攻めのAI」「守りのAI」、そしてそれらを繋ぐ「実装」の三位一体で説明する。
「攻めのAI」とは、民間DXや公共DXを通じて、事業そのものや働き方を抜本的に変革することだ。一方、「守りのAI」は、サイバーセキュリティ対策やプライバシー保護など、デジタル社会の信頼を担保する領域である。どれほど優れたAIツールを導入しても、情報漏洩リスクへの懸念(守り)が払拭されなければ、現場の実務(攻め)には根付かない。同社は、セキュリティからデータ基盤の整備、人材育成までを包括的に支援することで、現場で本当に動く「実装」を実現している。
「デジタルでもAIでも、変革に最も必要なことは『変化を受け入れること』だ」と福留氏は語る。変えてはならない文化や伝統を守りつつ、AIの力で変えるべき業務プロセスを大胆に見直す。この見極めと実行力が、今の経営層には求められている。
現場が自走するAI活用、イー・ガーディアンの実例
この「現場での実装力」を、自社グループ内でいち早く体現している好例が、グループ子会社であるイー・ガーディアンの取り組みだ。同社は、インターネット上の投稿監視やカスタマーサポートなどを手掛けるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)企業である。
イー・ガーディアンでは、現場でマネジメントを担うスーパーバイザー(SV)約130名に対し、生成AI「Claude Code」を導入した。特筆すべきは、エンジニアではない現場のSVたちが自らAIを活用し、約200個もの業務改善ツールを自作・運用している点だ。
従来、BPOの現場で業務改善ツールを導入しようとすると、顧客側のシステム改修を待たなければならず、スピード感を持った対応が困難だった。しかし、AIの支援により、現場の担当者が自ら課題を発見し、即座にツール化して検証する「現場完結型の改善サイクル」が実現したのである。
この成功の裏には、「AI生成コードの品質を担保するためのガバナンス構築」という、セキュリティ企業ならではの知見が活かされている。現場の主体性を引き出しつつ、リスクを適切に管理する体制を整えること。これこそが、AIによる業務改善を一時的なブームで終わらせず、持続可能な組織風土として定着させるための実践的なアプローチと言えるだろう。
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