三菱重工業は、2026年3月期の取り組みや中長期の成長戦略をまとめた統合レポート「MHI REPORT 2026」を公開した。本レポートでは、経営の方法論として掲げる「ITO(Innovative Total Optimization)」を通じた業務改革の成果や、14兆円超にのぼる豊富な受注残高の着実な遂行策、さらに「レジリエンス」をキーワードとした成長戦略とAI技術の実装に向けた取り組みを開示している。

「2024事業計画」の主要目標を前倒し達成、過去最高業績を更新
同社は「人々の豊かな暮らしと地球の未来への貢献」をミッションに掲げ、「2024事業計画」で設定した資本効率目標「ROE 12%以上」を1年前倒しで達成(2025年度実績:12.2%)した。2025年度の経営成績は、伸長事業(GTCC、原子力、防衛)の好調に支えられ、過去最高を更新している。
- 受注高(連結):7.7兆円
- 売上収益(連結):5.0兆円
- 事業利益率:8.7%(2026年度見通しは10.0%)
- ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率):12.2%
- フリー・キャッシュ・フロー:8,934億円
好業績を牽引するのは、エネルギー安全保障や防衛力強化などの世界的な需要拡大である。現在保有する14兆円超の受注残高に対し、同社はリードタイム半減とスループット向上を最優先とし、納期と品質を厳守した収益化を推進している。
高利益体質と成長投資を両立させる経営の方法論「ITO」
同社がグループ全社で浸透を図る「ITO」は、「全体最適」と「領域拡大」の2つを軸とし、高利益体質と成長投資の好循環を生み出すためのアプローチである。
- 縦の全体最適:企画からアフターサービスに至るバリューチェーン全体でフロントローディングやDesign for X(DFX)を徹底し、作業のやり直しを防いでリードタイムを短縮。
- 横の全体最適:事業部門を超えた専門家コミュニティの形成や、共通基盤(技術・AI・調達)の横展開により重複投資を抑制。
- 実践事例(ガスタービン生産能増強):3Dプリンター(AM)の導入による部品一体成形(コスト60%削減)や、同一機種の「連続組立」による段取り替え工数削減を推進し、増産体制を構築。
重点領域における成長戦略と「レジリエンス基盤」への展開
同社は、地政学リスクやサプライチェーン寸断など不確実性が高まる環境に対し、社会インフラの機能を維持・回復させる「レジリエンス」を成長のキーワードに設定している。共通基盤を活用し、以下の領域で事業展開を加速させる。
- データセンター関連事業の強化:AI普及に伴う急速な電力・冷却需要に対応するため、電源・冷却・制御を統合したインフラ最適化ソリューションを提供。高セキュリティ型エッジデータセンター「DIAVAULT」を展開するほか、米国でのM&AやNVIDIAとの協業を通じ、AIファクトリー向け基盤の技術開発を推進。
- エナジー・防衛・宇宙の伸長:GTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル)では世界トップクラスのシェアを維持しつつ、水素・アンモニア混焼技術の実証を推進。原子力では既設炉の再稼働支援や革新軽水炉「SRZ-1200」の開発を進めるほか、防衛分野ではスタンド・オフ防衛能力や護衛艦、豪州向けフリゲートなどの大型案件を着実に遂行。
国産AIの社会実装に向けPreferred Networksとのパートナーシップを深耕
ミッションクリティカル領域(社会インフラや防衛など失敗が許されない分野)における高度なAI実装に向け、同社はPreferred Networks(PFN)との資本業務提携を推進している。
- フィジカルAIとデジタルツイン:現場の物性データや熟練技術者の暗黙知をAIで形式知化し、リアルタイム性と信頼性を両立した自律型制御システムや予防保全ソリューションを共同開発。
- AIガバナンスと人材育成:全社的にDXを支えるデジタルイノベーション(DI)人材の育成を推進し、現場と最先端AI技術を融合させた新しい価値創造を目指す。
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