AI時代には労働から解放され、誰もが好きなことを仕事にできるユートピアが到来すると言われている。しかし、資本収益率が経済成長率を上回る資本主義のルールを放置すれば、それは単なる大量失業と格差拡大のディストピアに転落してしまう。本記事では、この不平等の根本原因にメスを入れ、「複利の力」を民主化する「ユニバーサル・ベーシック・インベストメント」を提言する。すべての人が生まれながらにして「資本家・資産家」となる権利を得ることで、AI社会はどのように変わるのか。新たな基本的人権の創設とその実現性を考察する。
労働からの解放と「不平等の方程式」
人生をもう一度やり直せるとしたら、あなたはどうする? もし私にそんな機会が与えられるなら、迷わず「子供の頃から投資を始め、複利の力を味方につける」ことを選ぶだろう。だが、時計の針は戻せない。だからこそ今、私ができることとして、次世代に向けた「複利の力」の民主化を提案したいのだ。
皆さんは、ユニバーサル・ベーシック・インカムならご存知だろう。だが、AI時代に必要なのは「ユニバーサル・ベーシック・インベストメント」だと私は考えている。これは私の造語なのでご存知の読者はいないはずだが。
AI技術の進化は、人間を労働から解放し、好きなことを仕事にできるユートピアをもたらす可能性を秘めている。たとえば、外科手術すらAIロボットの方が得意だし、トラックやタクシーのドライバーは自動運転車のおかげでその仕事から解放される。もちろん、心理カウンセラーや精神科医の仕事、企業経営やコンサルティングなど「SQ(Spiritual Quotient:精神的知性)」や「真・善・美」の判断を要する業務は、AIには代替不可能な領域だ。
しかし、資本主義のルールをそのまま放置すれば、この「解放」は単なる大量失業と困窮のディストピアへと転落してしまう。経済学者トマ・ピケティは著書『21世紀の資本』において、「資本収益率(r)> 経済成長率(g)」という不平等の方程式を証明し、資本を持つ者が持たざる者よりも加速して富を膨らませる構造(複利の偏り)を告発した。テクノロジーによって労働から解放されたとしても、不平等の根本原因にメスを入れない限り貧富の格差や教育格差は残り続け、AI社会を根底から不安定化させる要因になってしまう。
「ユニバーサル・ベーシック・インベストメント」とは、その課題への対応策だ。資本収益率の恩恵をすべての人々に平等に提供する。すべての人が一粒万倍の機会を得てその方法論を学ぶのだ。少なくとも機会としては平等にする。言い換えれば、「資本所有の民主化」であり、すべての人々が生まれながらにして「資本家・資産家」となる。少なくともその権利と機会を得る。
バフェットが証明した「複利の力」
世界一の投資家ウォーレン・バフェットは小学生の頃から株式投資をしていた。彼は、ビジネスの実用的な助言や金儲けのアイデアが詰め込まれた『一〇〇〇ドル儲ける一〇〇〇の方法』という本を子供の頃から読んでいた。『スノーボール ウォーレン・バフェット伝 』に、その本を読んだ時のことが書かれている。
この複利という発想がきわめて重要だと、ウォーレンは気づいた。本は一〇〇〇ドル儲けられるといっている。仮に一〇〇〇ドルからはじめて、年利一〇パーセントだとすると、
五年で一六〇〇ドル以上になる。
一〇年では二六〇〇ドル近くになる。
二五年では一万八〇〇ドルを超える。
一定の利率でも複利だと歳月がたてば莫大な額になることが、少額でもひと財産になりうることを示している。芝生に雪の玉を転がすうちに大きくなるように、数字が掛け合わされて増えるのを、まざまざと思い浮かべることができた。ウォーレンの時間への見方が変わりはじめた。複利は現在と未来を強く結びつける。きょうの一ドルが何年か後に一〇倍になるのだから、そのふたつはウォーレンの頭のなかではおなじものだった。
出典:アリス・シュローダー著、伏見威蕃訳『文庫・スノーボール ウォーレン・バフェット伝 (改訂新版)〈上・中・下 合本版〉』
バフェットが世界一の投資家になったのは、約80年に及ぶ投資でこの「複利の力」を使い続けたからだ。
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