AIが契約書のドラフトを9割完成させる時代、「専門知識の集約拠点」だった法務部門は存在価値の変化を問われている。法務と事業部門をつなぐ契約業務基盤サービスを提供するHubbleは、2026年9月30日にカンファレンス「Human×AI Transformation 2026」を開催。本稿では、Hubble COO / Executive Officerの町田健太氏のモデレータのもと、GMOフィナンシャルゲート コーポレートサポート本部 法務部 部長の西澤朋晃氏とパーソルテンプスタッフ 執行役員CROの金子佳民氏が登壇したセッションをレポートする。「AI時代に、『仕事の枠』をどう超えるのか」というテーマのもと、両氏が語ったのは、意思決定や評価基準を作り直す覚悟だった。
AI時代に付加価値を生む法務とは
セッションの冒頭、西澤氏は語った。生成AIの登場以前、法律に関する判断は法務部に任せるというように、専門知識は部門ごとに集約されてきた。しかし現在は、AIが契約書のドラフトを9割方作成できるようになり、法務・経理・人事といった専門分野のハードルそのものが下がりつつある。かつては法務に聞くしかなかった問いも、事業部門が自ら解決できるようになってきたのだ。
こうした状況で「リーガルのことだけ答えればいい」と専門性に閉じこもれば、法務は付加価値を生まなくなると西澤氏は指摘する。問うべきは、会社全体にとって今必要な機能は何か。そして、その機能を法務人材が担うとしたらどうなるかである。主語を「法務」から「会社」へ移すことで、仕事の境界線そのものがずれていくというのが西澤氏の見立てだ。
経営課題を起点に、専門人材が集う組織へ
金子氏はさらに踏み込む。「専門性を武器に戦うのは間違いありません。でも部門で言えば、法務部っていらないんじゃないか」と問いかける。
金子氏によれば、従来型の組織はビジネスの周囲に人事部、法務部、総務部、経理部を配置する設計が一般的だ。しかし、それは専門性や役割で組織を捉えているからにすぎない。たとえば海外M&Aのプロジェクトでは、法務から何人、経理から何人と人を出してチームをつくる。人を出すのは、その「機能」が必要だからだ。であれば、将来の組織は経営課題を起点に、専門人材が集まって形成されるものへ変わっていくのではないか。
「究極的には、TeamsやSlackのプロジェクトチャットが組織になるんじゃないか、とさえ感じている。大企業にお勤めの方からすれば『何を言っているんだ』と思われるかもしれませんが、私は今、そんなふうに未来を捉えている」(金子氏)
経営課題ごとに専門人材が集まる未来では、法務人材がビジネスに責任を負う役職に就いてもおかしくない。
「けっしてビジネスに迎合するのではない。守るべき一線をわきまえられるのは法務。そのうえでビジネスのスキームを考えられるか。きっとできるはず」(西澤氏)
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