2016年3月、新刊『スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義』のプロモーションのため、著者のティナ・シーリグ氏が来日。広く日本の読者に支持された前著『20歳のときに知っておきたかったこと』(2010年)の発展編ともいえる本書の内容について、本誌ビズジンの対談連載『Design×Management=Innovation 』でホストを務める佐宗邦威氏がインタビューした。クリエイティビティにおいて重要な「観察」と「マインドフルネス」についての対話を紹介した前編に続き、後編の今回はクリエイティビティにおいて重要な「増幅型リーダー」と「ストーリーテリング」に関するインタビュー内容をお届けする。
グリット(不屈の精神)の養い方
佐宗(biotope 代表取締役社長):
グリット(grit:不屈の精神、粘り強さといった意味の語)のお話をお聞きしたいと思います。グリットは、どうすれば強化できますか。
シーリグ:
私にとっては、グリットとは「餌をあげて養うもの」ですね。たとえば1冊の本を書きあげるには、かなりの粘り強さが求められます。私は印刷されて完成した本が家に届く、その光景を頭に描きます。私にとってはそれがモチベーションのもとになります。それによって、毎日机に向かって数千ワード書くぞ、という粘り強さが出てくるんです。
ある程度は性格的な傾向も影響するとしても、グリットは開発して獲得できる力です。ですが、今の若い人たちには、自分で長期的な目標を設定し、粘り強さを養う機会があまり与えられていないと感じています。
私が佐宗さんに「医学部を受けなさい」と言っても、佐宗さんにとってそれはどうでもいいことかもしれませんよね。でも、佐宗さんが将来、絶対に医学部に行くんだという目標を自分で設定したなら、その目標のためにはがんばれるはず。だから、グリットを身につけるためには「長期的目標をはっきりと持つこと」がとても大切なのです。
ティナ・シーリグ Tina Seelig
スタンフォード大学医学大学院で神経科学の博士号を取得。現在、スタンフォード大学工学部教授およびスタンフォード・テクノロジー・ベンチャーズ・プログラム(STVP)のエグゼクティブ・ディレクター。米国立科学財団とSTVPが出資するエピセンター(イノベーション創出のための工学教育センター)のディレクターでもある。さらに、ハッソ・プラットナー・デザイン研究所(通称d.school)でアントレプレナーシップとイノベーションの講座を担当。工学教育での活動を評価され、2009年に権威あるゴードン賞を受賞。著書に『20歳のときに知っておきたかったこと』『未来を発明するためにいまできること』『スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義』(いずれもCCCメディアハウス)などがある。