IBMが九州にイノベーションを起こす理由 -- 新プロジェクト「イノベート・ハブ 九州」を始動

日本IBMが、九州を地盤とする企業、大学、地方自治と組みオープン・イノベーション創出のためのプログラム「イノベート・ハブ 九州」を2016年6月より開始すると発表した。そもそもなぜ、IBMが九州に力を入れるのか。「IBM Watson Summit 2016」会場での発表内容をお届けする。

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[著] BizZine編集部

[タグ] 事業開発

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IBMと九州の歴史的な関係

 IBMは主催のイベント「IBM Watson Summit 2016」会場で「イノベート・ハブ 九州」という今後の計画を発表した。冒頭で、IBMの武藤氏は興味深いスライドを見せた。
スライドは1952年でのIBMのパンチカードシステムの写真と、1955年にIBMのトーマス・ワトソン Jr.が九州の会社を訪問したときの写真だ。トーマス・ワトソン Jr.とは、IBMの実質上の創設者トーマス・ワトソンの息子である。ワトソンの名は、IBMの研究所の名前でもあり、最近ではIBMのコグニティブ・テクノロジーの名前として継承されている。今回の発表が行なわれたイベント「Watson Summit」もこの名前を冠したものだ。

1955年はまだ新幹線もなかった時代です。その時代にトーマス・ワトソン Jr.が九州を訪れています。IBMは昔から九州と深いつながりがあるのです。(武藤氏)

日本アイ・ビー・エム株式会社
常務執行役員 IBMシステムズ・ハードウェア事業本部長 武藤和博氏

 九州は日本の産業の集積基盤として層が厚く、中でも福岡市は地方創生の政策の中で最も成功しているといわれる都市として、観光資源、エンターテイメント、食、ファッションなどをリードしている。訪日観光客も多く、日本のアジアへの玄関でもあり、グローバル企業の拠点でもある。その九州を地盤とする企業、大学、自治体と連携する事業創造のためのプログラムが「イノベート・ハブ 九州」だと武藤氏は言う。

 以前から日本IBMは九州の産官学のフォーラムを実施してきており、福岡や北九州だけではなく、九州全般そして沖縄まで活動を広げている。1982年から連続開催されている「九州フォーラム」は昨年34回めを開催し、「九州から国を開く」をテーマに大分で開催された。

破壊的なイノベーションは一社単独では難しい。企業の中の事業開発や外部のコンサルタントだけではなく、社内外からアイデアを募り、開発・実装・事業化・協業をおこなうオープンイノベーションが必要。(武藤氏)

 IBMが提供するのは、クラウドコンピューティングのための環境「Bluemix」、データ分析や機械学習を統合した「コグニティブ・コンピューティング」だ。こうしたテクノロジーとIBMの人材による企業支援、スタートアップのためのメンタリングを提供していくという。

「事業化」と「ビジネス・マッチング」が鍵

日本アイ・ビー・エム株式会社
マーケティング&コミュニケーション クラウド・マーケティング 理事 
古長由里子氏

 とはいえ、九州、とくに福岡市は「スタートアップ都市」宣言や国家戦略特区として今や成功している。これまでも自治体やコミュニティによるワークショップ、勉強会、ハッカソンなども盛んだ。こうした活動と、今後IBMが提供していくプログラムは何が違うのか。理事の古長由里子氏は、IBMの役割は「事業化」や「ビジネス・マッチング」だと語る。

アイデアが生まれても、企業ではセキュリティなどいくつもの課題があって事業化に結びつかないことが多くあります。IBMの経験や人、サービスを提供することで、ビジネスの種を一緒に育てていきたいと思います。(古長氏)

 たしかにオープンイノベーションは注目されているものの、その成果を企業が事業として採択するケースはまだ少ない。コミュニティやベンチャーの活動と、大手企業の事業開発にはまだ溝がある。そのためにIBMは協業を促進するためのハブを目指しているのだ。

 BluemixやWatsonといったIBMのテクノロジーが無償あるいは安価に提供する以外に、IBMの経験あるスタッフによるメンタリング、プログラミング・スクールや研修の提供も予定されているという。

 このプログラムには、ゼンリン、ソフトバンク、西日本新聞、ふくおかファイナンシャルグループ、安川電機などが参加している。
 九州を起点として、企業とスタートアップ、自治体、大学などのアイデアが融合し、海外進出、海外企業との交流の支援も行なっていくという。今後IBMが、スタートアップ都市として成果を上げている福岡だけでなく、震災後の状況でもある九州全体を元気にしていくことを期待したい。

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