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ビジネスモデルキャンバスに足りない、“もう一つのブロック”は「ジョブ」

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プロダクトだけでは勝てない時代の「ビジネスモデル・イノベーション」には“難所”がある

 破壊的変化の時代をビジネスモデル変革で乗り切ろうという戦略を立てる企業が増えています。単に新商品を市場に導入するだけでなく、儲ける仕組みを変えていこうということですが、その動機はさまざまです。

ビジネスモデル・イノベーションの動機

  • 事業の成熟による多角化 既存ビジネスモデルが成熟し陳腐化するなかで、新たな成長の柱が必要となっている企業は多いです
  • 収益性向上 プロセスやプロダクトのイノベーションと比べ、ビジネスモデル・イノベーションは5年間にわたり6%も収益性が高いことがわかっています (https://www.bcg.com/documents/file36456.pdf)
  • 新参入のベンチャーによる脅威 “しがらみ”のないベンチャー企業は、価格設定からチャネル、課金方法までを「破壊的に」変えて業界に参入します
  • 消費マインドの変化 場所も取り、メンテナンスも必要な製品購入よりも随時サービスで支払うことを好む消費者が増えています
  • 顧客基盤の安定化 販売後に顧客との接点がなくなるよりも、継続的にサービスを提供することで売上の安定や、顧客ニーズを把握する接点を維持したいと考える企業が増えています

プロダクトだけでは勝てない時代

 上記のようないくつかの理由で、新たなビジネスモデルを構築することが求められています。しかし、事業企画担当者は大変です。以前は、製品の企画書を書き、憶測で算出した事業規模がおまけのように付いていれば、上司がじっくりと読んでくれました。読んだ上で気に入ってくれれば、上司の意見も加わり、その上の階層へと送られます。そこでも気に入ってくれれば…めでたしめでたしと、企画が通るといった具合です。程度の差こそあれ、企画が通るプロセスというのはどこの会社に行ってもあまり変わりがないと言ってもいいでしょう。

 しかし近年、変わったことが起きています。新しい事業アイデアを出したり、革新的なビジネスモデルの提案をしたりと、企画業務そのものも難しいのですが、レビューや意思決定も難しくなっているのです。新機軸での提案は、従来の判断プロセスが効かないからです。企画書を読んだだけでは判断が難しいため、企画がボツでもOKとなるわけでもなく、かといって建設的なフィードバックがあるわけでもなく、放置されたりします。既存のビジネスモデルを変えないまま、新しい商品だけを企画しているのであれば、経験として慣れ親しんだ判断ポイントが役に立つのですが、新たな収益スキームや新しい協業相手とのビジネスを提案されても役に立ちません。

 そこで、新しいビジネスモデルの「共通言語」が必要となり、ビジネスモデルキャンバス(BMC)に代表されるツールが多くの企業で導入されています。価値提案(VP)、顧客セグメント(CS)、チャネル(CH)、顧客関係(CR)、収益スキーム(R$)など、製品以外のパラメーターを考え、デザインし、レビューする地図として役立っています

 ビジネスモデルキャンバスを「設計書」として活用するのが第1ステージだとすると、その設計書を社内で多くの人が読めるように「共通言語」にしていくのが第2ステージです。共通言語として定着すればこそ、新たなビジネスモデルの提案についても社内コンセンサスが得られるようになります。

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この記事の著者

津田 真吾(ツダ シンゴ)

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