前回、マネーの本質に遡り、デジタル通貨が「通貨」として成立するかどうか、あるいはブロックチェーンならではの違いがあるかどうかを議論した。一方で、各国の中央銀行がブロックチェーンを活用したデジタル通貨を発行するというアイデアについても、各所で検討されている。そこで、今回は中央銀行がデジタル通貨を発行することが、社会・経済システムにどのような影響をもたらすか考えてみたい。
イングランド銀行のブロードベント副総裁の講演
ここに、大変興味深い講演録がある。英国の中央銀行であるイングランド銀行の副総裁を務めるベン・ブロードベント氏が、中央銀行が発行するデジタル通貨についてロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で講演を行ったときのものだ(2016年3月2日)。イングランド銀行としてデジタル通貨を発行するかどうかといった方針を述べたものではないが、仮に中央銀行がデジタル通貨を発行した際に、金融システムにどのような影響があるかを考察したものであり、大変示唆に富むものだ。そこで、今回はこの講演内容を紹介しつつ、考察を加えていくことにしたい。

本講演で、ブロードベント氏はブロックチェーンを用いたデジタル通貨の本質は、「デジタル」であることでも、新しい「通貨」であることでもなく、「分散型の仮想決済・資産登録台帳」(Decentralised virtual clearinghouse and asset register)としての側面であると位置づけている。すなわち、信頼できる第三者がいなくても、分散型で清算・決済できるメカニズムこそが新しいというのである。では、この分散型決済システムを中央銀行が使えば、どのようなことができるだろうか。
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