イノベーションのコツは、バイアスを壊すアイデアで“強制発想”をすること
濱口氏が、このコンセプトに応じてブレストレベルで考えたというアイデアは次のようなものだった。
たとえば、小型のEV車を京都の左車線でしか走れないようにする。右車線に入ると危ないから止まる。小さい路地に入ろうとしても止まる(図表8)。
EVステーションはすべての大きな交差点の近くに設置する。京都の大きな交差点は必ず旧所名跡の近くにあるので、そこに乗り捨てて観光場所に行けるという固定システムが作れる(図表9)。
さらには、京都で大地震が起きて、夜中に真っ暗になったときに携帯電話の充電拠点に使えるようにする。夜中なら、おそらくEVは各ステーションにそれぞれ20台くらいつながっているだろう。
大停電になって、真っ暗になったら、そのEVステーションにLEDライトが点灯する。京都市民が明かりを頼りにそこまでくる。ステーションの下にパネルがあって、それを外すと、携帯につながるケーブルが200本、入っている。つなげられているEVの電池が全部なくなるまで、200台分は充電でき、京都の人にとっての災害時のライフラインになる。
固定されているからこそできる仕組みを生かして、アイデアを広げていった例だ。
濱口氏は、この事例紹介を次のように締めくくった。
仮に、A社はこのようなバイアスに気づかず、大中小のEV生産を続けるとする。B社は気づいて、車に加えて固定システムを提案する。世界中のいろいろな町がどんなEVシステムを導入するかを検討し始めて入札をした場合、どちらが強いかを考えれば、新しいアイデアを持つB社だ。
“強制発想”は必要
濱口氏は、バイアスに対抗するようなアイデアが出てきたときに、「信じられなくても、せめて5?10分間は強制発想で考えてみる」ことの重要性も強調した。また「重要なのはアイデアではなく、アイデアを生み出す背後にあるパターンをつかむことだ。アイデアと戯れていても、イノベーションは絶対に生まれない」とアドバイスした。