岩嵜氏は国際基督教大学にてエスノグラフィを中心とした定性調査を、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程にて建築を学んだ後、博報堂に入社。同社在籍中にイリノイ工科大学Institute of Design修士課程へ留学し、デザインシンキングを学ぶ。『機会発見』には岩嵜氏がこれまで学び、実践してきた社会学、デザインシンキング、マーケティングの3つのエッセンスが詰まっている。
一方、宮井氏は博報堂に入社後、情報システム部門を経て博報堂ブランドデザインに所属。博報堂DYグループの社内ベンチャー設立制度「AD + VENTURE」を利用し、株式会社SEEDATAを設立。同社は、先進的な消費者群(トライブ)のリサーチを主軸としたイノベーター支援事業を展開している。Biz/Zineでは、SEEDATAを設立した際に宮井氏のインタビュー記事を掲載した。
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デザインシンキングが有効な局面は「カテゴリーイノベーション」
宮井:
岩嵜さんは博報堂で最初に「デザインシンキング」に注目した人だと記憶しています。岩嵜さんと「デザインシンキング」の出会いはいつ頃なのでしょう?
岩嵜:
学生時代にIDEOのことを知ったのが最初だと思います。IDEOがPalm社のPDAをデザインする際に「ポケットに入るサイズ」という条件を課したんです。どれだけ性能を良くするか、ではなく、「使いやすさ」を主軸においてPDAをデザインしたのが面白いなと。デザインシンキングの手法を仕事の中で使うようになったのは10年程前です。博報堂イノベーションデザインのクライアントと仕事をする中で、徐々に導入していきました。
宮井:
クライアントが「デザインシンキング」の考え方やメソッドを知らない中で、どうやってその有用性を説明したんですか?
岩嵜:
「いま成長中のプロダクトでも、いつか成長が鈍化するので、その時のために準備をしよう」とクライアントに伝えました。プロダクトライフサイクルの図を見てみるとわかるのですが、プロダクトの市場への普及がある程度進むと、成長が鈍化するんですよ。博報堂のような広告会社の仕事は図の真ん中の部分が多く、広告やマーケティングによって順調にプロダクトは成長していきます。
けれども、プロダクトの成長が鈍化した時に何をすればいいのか。僕が主に担当しているのは、カテゴリーイノベーションの部分。カテゴリーの意味を再定義することで、そのカテゴリーを再び成長させる仕事ですね。
宮井:
図に当てはめると、SEEDATAがやっているのは「0→1」の部分。全く市場がないところに新規商品の意味を定義する仕事です。導入(立ち上げ)、成長、成熟(再活性)の3フェーズでいい具合に棲み分けができていますね(笑)。SEEDATAと岩嵜さんが所属する博報堂イノベーションデザイン、そして博報堂のような広告会社のアプローチの違いがよくわかりますね。