論拠の見える化、初期からの動くプロトタイプ制作で品質の高い製品を開発
もうひとつの事例は、自動車メーカーとの研究開発プロジェクトだ。プロジェクトのゴールは車載センサーを活用した新しいサービスのプロトタイプ開発で、クライアントは研究開発部門の研究者だった。研究開発の初期段階だったため、議論の発散と収束を上手くコントロールし、プロジェクトの前半のうちにサービスイメージを固めなければならない。回数も限られている検討の機会を効率的に進めるために活用したツールとして、工藤氏は「雲の絵」というフレームワークを紹介した。
これは、左上にから右下に向かう地図のようなもので、間にある雲のひとつひとつに、議論すべきテーマが書かれている。各テーマがどのようにつながりあっていて、どのような順番で解決していけばゴールにたどり着けるかということが、可視化されたものだ。
今回は「雲の絵」をアジェンダ管理に使い、雲から雲を渡り歩いていくようなイメージで毎回の議論を進めました。
ゴールと現在地が可視化できますので、今回はこういう話をしなければならない。今回はこういうアイデアで発散させなければならないということを共通認識として持つことができます。これによって脱線や手戻りというものを防止できるのです。
非常に有効で、明日からでも使えるフレームワークです。
この事例におけるもうひとつのポイントは、初期の段階からサービスプランナーだけでなくエンジニアが一緒に動いたという点だ。研究開発の段階では、ゼロベースで自由に企画を検討することが多いが、実際にでき上がるサービスは技術的な制約条件に左右される。企画の段階から技術のわかるメンバーが入り、実現可能性やコスト面の課題、他社とのコラボレーションの必要性なども含めて検討できれば、実現性の高いサービス設計ができるというわけだ。
工藤氏は継続的プロトタイピングのエッセンスとは、従来は分断されていたビジネスプラン、サービス設計、UIデザイン、開発というプロセスを連携させる点にあるということを強調した。
分断をいかに制御するかという点において、これらの事例から学べることは、サービス設計の段階でビジネス部門と連携し、
・論拠のあるプランニングをしていきましょう
・初めの段階から製造部門も連携し、実現性の高いサービス設計をしていきましょう
・論拠をUIデザインにも連携しましょう
ということです。
それと、エンジニアは早い段階から入っていくこと。仕様書が降りてこないと開発できないという状況は、これからの時代は避けていくべきだと思います。UIデザインとエンジニアリングでそれぞれ別のプロトタイプを回すのではなくて両輪で、サービスプランニングと三位一体で回していく、それが継続的プロトタイピングです。
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