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デザインシンカーの時代に考える、デザイナーの価値

デザイン思考だけで語れない、デザイナーの「曖昧な資質」が強い経営に欠かせない理由

第1回

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 本連載では「デザインシンカーの時代に考える、デザイナーの価値」というテーマで、「デザイン思考だけでは語れない、デザイナーの曖昧なスキルや資質」について話したいと思う。とてもふわっとしていて、非形式的な部分が多いために、なかなか議論されず見過ごされてきた価値だ。  だが「英国のデザインコンサル、顧客満足度1位」や「最も多くの受賞を果たしたデザインコンサル2016」などに選ばれた実績があるデザインコンサル「シーモアパウエル」で、過去10年間、世界各国のグローバルブランドとの多種多様なプロジェクトに携わった私の経験から確信的に思うのは、「デザイナーの曖昧なスキルや資質」が、競争力ある事業を実現するために最も重要な価値(の一つ)といっても過言ではない、ということだ。  しかし、いかんせん曖昧なので、文字で表現するのは非常に難しく(故に、議論されずにきた)、言葉を丁寧に選んで、無理に文章を削らないようにして書かないと、一気に本質が見えなくなってしまう。連載の第一回は「イントロ」として、私が思う「曖昧なデザイナーのスキルや資質」の重要性について、まずは一度お話し出来たらと思う。

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デザイナーから「デザイン思考」をとったら、何が残るのか

 近年日本では、「デザイン思考」を取り入れた戦略家やマーケッターが、「デザインシンカー」というハイブリッド人材になり、高いレベルの事業貢献を果たしている。

 私の周りにも、その人の話に何時間でも聞き惚れてしまうような、優秀なデザインシンカーが何人かいる。彼らは、デザイナーが学ばなかったり実践してこなかったりした、事業戦略を立てるためのデータ収集や社内政治の営み方といった、ハイレベルなスキルを持っている。さらに、「デザイン思考」として紹介されてきた、従来デザイナーが得意としてきた「ユーザーを巻き込んだアイデア発想」や「プロトタイプを短いサイクルで作りながらアイデアを検証するプロセス」などを、見事に習得しているのだ。越境人材になろうとするくらいだから、本来頭が良い人が多いので、学習スピードも半端なく、打率も高く、ただただかっこいい。

 一方、そんな優秀なデザインシンカー達が台頭する時代に、デザイナーにはどんな事業貢献ができるのか。経営層や事業部長といった企業のステークホルダーはもちろんのこと、当のデザイナーやデザイン組織のトップでさえも、クリアな答えを持ってない印象を受けることがある。「デザイン思考なんて昔から普通にやっているし」と話すデザイナーから「デザイン思考」をとったら、何が残るのか。

シーモアパウエルロンドンベースのデザインコンサル「シーモアパウエル」。過去10年間、同社にデザイナーとして私が勤続する中で、「デザイナーの曖昧なスキルや資質」の重要性を肌で感じてきた。

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この記事の著者

池田 武央(イケダ タケヒロ)

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