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デザインシンカーの時代に考える、デザイナーの価値

“コンセプトカー”は創らない──パナソニックデザイン池田さんが「事業帰結するデザイン」にこだわる理由

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 「経営層の間にも、デザインに関する高いリテラシーを持つことが重要だという雰囲気が、さらに醸成されつつある」。そう語るのは、元シーモアパウエルのデザインストラテジストで、2018年4月からパナソニック株式会社の社内カンパニー・アプライアンス社のデザイン統括部代表を務める池田武央氏。あくまで事業貢献を重視するデザインをしていくと語る池田氏に、Biz/Zine編集部が話を聞いた。

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ビジネスにおける“クリエイティブ職の置き場所”が社会全体で変わってきている

 池田氏は、直近まで外部パートナーとしてプロジェクト等に参画していたパナソニックに「内側からの支援者」として参画を決めた。それはパナソニックがデザインを本気で経営に取り込み始めたあかしと言えそうだ。というのは、池田氏が参画することになって誕生したデザイン統括部(通称FLUX)は既存のデザインを担う組織とは大きく性質を異にするからだ。

 池田氏の所属するパナソニック アプライアンス社(以降アプライアンス社)は家電事業を手掛けるパナソニック社の社内カンパニーである。そのデザインセンターには、既に若手デザイナーが2年限定で集まり新領域開発を行う組織、FUTURE LIFE FACTORYがある。

 FUTURE LIFE FACTORYはパナソニックの若手デザイナーによるクリエイティブ集団で、先のデザインを生みだすバックボーンとなる、今後のあるべきくらし像の構築や、多彩なクリエイターたちのHUBとなることを目的に、事業部門に所属せず、デザインセンター所長直轄のチームとして、7名のデザイナーがフレキシブルに活動している。

 しかし、今回誕生した池田氏率いるFLUXは、必ず事業帰結するデザインを行うという。

こうした新しい組織を立ち上げると、どうしても「コンセプトカー」のような先行開発を連想しがちです。しかし私たちは絶対にコンセプトカー的なものは作りません。あくまでも事業に貢献するために、人々にとっての本質的な価値を生み出すために。デザインになんができるか。それを見極め、実行していく組織なのです。

 池田氏は突然パナソニックに参画を決めたわけではない。シーモアパウエルで働いていた7年ほど前からプロジェクトベースでアプライアンス社との仕事をしてきている。その中でも大きな仕事は昨年の経営改革推進に関するコンサルティング業務だ。

 2013年に発表した中期計画以降、パナソニックは「脱・自前主義による成長・効率化」を掲げている。その文脈で、池田氏に話があった。アプライアンス社の本間社長からデザイン・クリエイティブによる経営改革推進の許可を得ていたデザインセンター所長の臼井重雄氏が、当時シーモアパウエルで働いていた池田氏に改革案の相談を持ちかけたのだ。そこで、池田氏はパナソニック社内の40人のデザイナーや、国内外のクリエイティブ職を重視している企業にインタビューを行い、パナソニックデザインの課題を浮き彫りにする仕事を行った。

 こういったコンサルティング業務も、デザイナーの仕事なのだろうか。池田氏はこう話す。

シーモアパウエルに11年いましたが、その間、クリエイティブ職に求められるものがどんどん変わってくるのを感じました。商品のスタイリングの話がUI、UXに拡大し、サービスに拡大し、ブランド、戦略、組織改革の話にまで拡大してきています。

徹底的に人に寄り添いながら、豊かな想像力で新しいソリューションを生み出す、それがクリエイティブ職に求められるもの。それは、商品の色や形だけに必要なものではなく、ビジネスにそもそも必要なものです。少し前までは、デザインというと『狭義のデザイン』のみ重視されて、色・形などをスタイリングするのみの仕事と誤解されていましたが、それが広義になってきています。ビジネスにおける“クリエイティブ職の置き場所”が社会全体で変わってきているのでしょう。

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デザインがビジネスにインパクトを持たないという状況は、経営層に「デザインリテラシー」がないことに等しい

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