不確実な時代のビジネスは、“直線から曲線”への「転換期」を迎えている
宇田川:
今の話で思い出したのが、ティム・インゴルドという人の『ラインズ 線の文化史』という本です。変わったタイトルですが、要は人間の文化の歴史を、例えば五線譜だとかの“線”から読み解くという話をしているんです。その本の中に、「線には2つの種類がある」とあります。ひとつは曲線で、もうひとつは直線ですと。例えば、ジャングルの中で生活している原住民の人たちは徒歩で移動するので、生活のラインが曲線になります。一方、直線はどうやって生まれるかというと、それはトランスポーテーション(輸送)だと。輸送というのは、A地点からB地点に行こうとしたとき、間に何もない場合に最適化されるわけです。間にあるものは、言うならば邪魔なんですよね。だから直線にしていく。
インゴルドは、直線の世界というのは帝国主義的な支配のロジックで、支配者にとって都合がいいラインが直線なんだと言い、曲線が失われてしまったことについて批判をしているんです。