日本の大手企業が「イノベーションのジレンマ」に陥る5つの理由、6つの解決策
今日、多くの日本企業が「イノベーションのジレンマ」に陥っていることは明白だ。IoT事業にしても、欧米諸国はもちろんアジア新興国にも後れを取っている。はたしてその原因はどこにあるのか、そして現状を打破するために、我々が取るべき次の一手はどんなものなのか。
8月9日(水)に行われた「Biz/Zine Day 2017 Summer」内のセッション「ものづくり企業における『イノベーションのジレンマ』の大誤解」で語られた内容は、その疑問に対する1つの答えになるかもしれない。
はじめに登壇したのは、株式会社ゼロワンブースター代表取締役CEO・鈴木規文氏。株式会社ゼロワンブースターは、大手企業とベンチャー企業を結びつけ、起業家育成や新規事業開発のサポートを手がけている会社である。
鈴木氏はまず、日本の大手企業が「イノベーションのジレンマ」に陥ってしまう理由について、5つの要素を挙げて語った。
1. 社内で評価される技術ほど市場に求められていない
研究開発や技術革新は、必ずしも逸脱的イノベーション(破壊的イノベーション)につながるとは限らない。なぜなら、高すぎる性能は市場のニーズを飛び越えてしまうからだ。
大手企業は特に、自社の技術力に自信を持っています。しかし、それが市場のニーズと合致しているとは限りません。多くの場合は、市場が求めているレベルを飛び越えてしまっているのです。
2. 市場のニーズを超えることで後発のプレイヤーに追い抜かれる
そして、必要以上の技術革新を追求し、市場のニーズを飛び越えてしまった企業は、後発のプレイヤーに追い抜かれてしまうのだ。これは大手企業がイノベーションのジレンマに陥る1つの要因となる。
3. 社内では逸脱的イノベーションが否定されてしまう
また大手企業には、逸脱的イノベーションの種をつぶしてしまう傾向がある。なぜなら参入意義が見出せないからだ。
もし10年前に、UberやAirbnbのようなビジネスモデルのアイデアがあったとしても、大手企業では意思決定することができなかったでしょう。ニーズがあるかもわからない、あったとしても市場規模が小さい。そんな事業にリソースは割けないというのが合理的な判断ですから。
4. イノベーションにつながるアイデアがあっても実行しない
とはいえ、大手企業がイノベーションにつながるアイデアを生み出せないわけではない。むしろ、ベンチャー企業やスタートアップ企業が手がける事業の多くは、大手企業がすでに考えついていたアイデアである場合がほとんどだ。
アイデアそのものに価値はないと言う人がいるように、どんなにいいアイデアも実行しなければ意味がないんです。正直なところ、大規模な事業展開が見込めるようなホワイトスペースは現在の市場にはありません。自ら市場をこじ開けていく必要があるのに、市場規模が小さいからという理由でイノベーションのアイデアが実行されないことがほとんどです。
5. 新規事業に合理的計画性を求めてしまう
たとえアイデアを実行に移せたとしても、大手企業ならでは慣例が邪魔をして期待したような結果が得られない場合が多い。
そもそも市場は不確実なものですが、新規事業となればなおさらです。それなのに、社内では説明合理性が求められるから不適合が起こってしまう。社内で承認を得るために合理的な計画を立てようとして、結果市場のニーズからかけ離れていってしまうわけです。
このように、様々な課題を抱え「イノベーションのジレンマ」に陥っている大手企業。このような状況を脱却するには一体どんな解決策が必要なのだろうか。鈴木氏が挙げたポイントは以下の6つであった。
- 既存顧客だけではなく新規事業の顧客とも向き合える組織にすること
- 市場規模が小さい事業にも前向きに取り組むこと
- 一発必中を狙わず小さな失敗を繰り返していくこと
- 既存の意思決定組織から離れた場所に「出島」をつくること
- 新しい価値を評価してくれる市場を開拓していくこと
- 「社内変人」を活用して逸脱的イノベーションを起こすこと