「地方の企業が衰退して、東京のど真ん中の企業だけが成長している」は嘘
基調講演に登壇した藤野英人氏は、資産運用会社レオス・キャピタルワークスを創業した「ベンチャー起業家」だ。それまで外資系の会社2社、日系の会社1社を経て、ウォーターダイレクト(現プレミアムウォーターHD)の創業者でもある。
現在、レオス・キャピタルワークスでは全体で4054億円(2017年7月末)を運用しているが、そのうち投資信託の「ひふみ」(ひふみ投信、ひふみプラス、ひふみ年金)という商品では3032億円(2017年7月末)を運用している。「ひふみ」の特徴として、主に日本の成長企業に投資しており、“守りながら増やす運用”に挑戦し、顔が見える運用をしていることにある。特に「顔が見える」ことは投資会社としては特徴的で、藤野氏だけでなく、アナリストは顔やプロフィールを公開しているという。
2008年10月のスタート時は運用残高1億5千万円、69名の顧客だったが、右肩上がりの運用成績を誇って着実に資産を増やした。さらに、2017年2月にテレビ東京の「カンブリア宮殿」に出演したことがきっかけで、顧客層が拡大し運用残高が急増している。パートナー販売会社も2017年7月末現在44社ある。
はじめに藤野氏は、参加者に問いかける。
アベノミクスが始まる前の2002年12月から、2012年12月の10年間で、日本の会社全体で、株価が上昇した企業は何%だったか?
答えは「70%の1705社」だという。それら70%の会社を平均すると株価は10年で約2.1倍、利益は10年で約2.0倍にもなっているという。「失われた10年」と言われる時代においては意外な結果かもしれない。藤野氏の説明によると、上場した企業の多くは中小企業である。大型株(時価総額3000億円超)はたった4%に過ぎず、残りの96%は中小型株(時価総額300億円〜3000億円)と超小型株(時価総額300億円未満)だ。「大きな企業に投資をすれば安全だと思った人にはノーチャンスだった。日本企業の幅を見て、全てがチャンスだと思える人にとっては、チャンスの10年だった」と藤野氏は語る。
TOPIX Core30(時価総額上位30社)を見てみると、日本たばこ産業やセブン&アイ・ホールディングスなどが占める。藤野氏は「素晴らしい会社ばかり。就職すると勝ち組と言われる企業で、多くの学生が志望するが、有名大学の学生でもエントリーシートで落ちて心を痛めたりする」。このような企業の10年間(2002.12-2012.12)の株価は「-24%」だった。
これが皆さんのイメージする日本株の姿じゃないですか? だからこの10年間の日本はダメだったよねと思われるんじゃないでしょうか。
一方、同期間のJASDAQは「+43%」、東証2部は「+67%」。つまり、同じ日本なのに、中小型企業の株価は元気だった現実があるのだ。藤野氏は「皆さんは逆のことを思っていませんか?日本というのは中央の一部の会社だけ成功していて、地方の会社は東京の会社に吸い込まれていると」。上場している会社について言えば、地方の会社もしくは“東京の千代田区と中央区以外”の会社のほうが利益を出しているのが現実の姿だという。「上場している会社については地方の会社はすごく元気」と、年間120泊ほど地方にいる藤野氏は所感を語る。
僕が元気にするために地方に行くわけではなく、元気な会社が地方にあって直接出向き投資をしているというだけの話です