「近未来に最適化」するAIと、「1万年単位で動くもの」を目指すALife
池上:
なぜALife研究が重要だと考えるのかは、自分でシステムを作ることを考えてみると分かりやすいと思います。例えば脳というシステムを人工的に作るとして、ある問題を解かせるツールとしてとか、パターン認識のために、などいろいろな使い方があるでしょう。しかし、脳にとって一番問題なのは、脳を放っておいて80年位稼働しつづけるかどうかということなんです。それって無茶苦茶難しいんですよ。一週間くらい動くシステムならできますが、80年動くものを作ろうとすると、これまでとは別のシステムがいると気づくんですよね。温度がすごく変わったらどうしようとか、急に壊れたらどうするかとか……。そういう、長い時間耐えうる、生きたシステムをどうつくるか問題に対して、生命というのは、潜在的な可能性のある回答をたくさん用意してくれているんです。
代謝反応や自己複製、あとは適応的な能力や進化する能力、そういった物を人工的に作ろうというのがこの分野の始まりです。そこから、このALifeの国際会議にも参加していたダニエル・ヒルズやブライアン・イーノといった人たちが、10年ほど前に始めた大きな取り組みに、「Long Now Foundation」というものがあります。例えば、1万年壊れない建物を建てる技術はどういうものか、1万年動く時計を作るにはどうすればいいか、といったことをテーマにしています。