デロイトトーマツコンサルティングは昨年『モビリティー革命2030』(日経BP)を発行するなど、自動車産業の未来予測と提言をおこなってきた(前回の発表はこちらの記事を参照)。今回の発表はこの間の海外のEV化の動向などを踏まえ、新たな考察を加えたものとなる。
なぜ日本はEVとFCVの共存をめざすのか
今回の発表の統括者のパートナー、佐瀬真人氏は、発表の冒頭で「日本の自動車産業のプレゼンスが低くなりつつある。また各国のEVに対する取り組みが加熱していることから、デロイトとしての見立てを発表することにした」と語った。
2015年のパリ協定以降、地球温暖化とCO2削減に向けての取り組みは西欧諸国だけでなく、インド、中国も合意しており、世界的にZEV(ゼロ・エミッション・ビークル:排ガスセロ車)に向かうトレンドが確定的になった。 すでにイギリスやフランスはガソリンエンジン車を2040年以降、撤廃する方向を打ち出し、自動車産業が盛んなドイツもフォルクス・ワーゲン(VW)の排ガス不正問題以降、EV化を急速化させている。こうした背景の中、これまでHV(ハイブリッド)重視だったトヨタ自動車が、EV化に向けて重い腰を上げ、8月にマツダとEV化を目的に提携するなど、日本でもEV化の動きが本格化してきたといえる。しかし、ヨーロッパ各国の急速なEVシフトや、米国テスラの急伸(時価総額でGM超え)といった急激な変化の中で、日本のEV化の「出遅れ」を指摘する声もある。
とはいえ、各国のこうしたEVシフトは政府の思惑が絡んでおり、調査機関の予測もばらつきが大きい。そうした中で、日本の自動車産業にとっては、EVとFCV(燃料電池車)の両面展開こそが重要だとデロイトトーマツコンサルティングの尾山耕一氏は言う。
「EVだけでは、バッテリーの問題などはカバー仕切れない。最初はEV化が先行するだろうが、長期的にはFCVも必要となる。将来的にはEVとFCVで7:3の比率になることが理想だ。」(尾山氏)
現状のEVには、エネルギー効率、充電コストの問題がある。充電の問題は各国政府の取り組みが進み、ランニングコストを勘案するとコスト面でもガソリン車と遜色がなくなり、その転換の年としては「2025年」がめどになるという。「2025年にEV化は7.8%になり、2030年以降はEVがFCVと共存する時代が来る」というのがデロイトの予測だ。
また尾山氏は、政府の「FCV(燃料電池車)を中心とした水素社会実現を促進する研究会」の民間企業事務局も担当している。日本の社会課題からの水素エネルギーの重要性を強調した。