「なぜスタートアップの失敗は繰り返されるのか」を考え続けて思う、“起業科学の研究者”の必要性
『ビジネスモデル症候群〜なぜ、スタートアップの失敗は繰り返されるのか?』(技術評論社)を上梓した和波氏。イベントの冒頭、自身の本について、「私の本は夢を砕く本。一番突き刺さる人は失敗の経験をしたことがある人、本当にそれで振り返ってなぜ自分が失敗したのかがよくわかる。これから起業する人が読んでも、全く現実味が感じられない」と紹介した。
また、和波氏より今回のイベントの開催主旨が、以下のように語られた。
2010年代に入り、リーンスタートアップによって事業計画書(という思い込み)の呪縛から解放されると期待したが、結果的には「ビジネスモデル症候群」という新たな思い込みが出現し、その呪縛から逃れられることできませんでした。そこで、リーンスタートアップのメソッド論から一度離れてみようと思い、また、山口豪志氏と久しぶりに会話し、同じ感覚を持っていたことが判明しました。このことが今回のイベント開催のきっかけになっています。特に、起業の指導者・支援者が継続的に集える場所にできないかと。
そんな和波氏の研究の背景を少し説明しよう。現在Lean Startup Japan LLC代表社員だが、プロセスコンサルタントの活動が長い。プロジェクトマネージメントのコンサルやISOの認証などをしていたといい、「一番メインでやっていたのはプロジェクトの火消しのコンサル。つまりはプロジェクトが失敗をしないようにやり方を整えるということが専門職」と話す。
和波氏自身、3回の起業をしている。「ビジネスの成功と失敗を繰り返しながら、どうしても自分の思い通りにうまく進められないのがビジネスの立ち上げというところだった」といい、どのような起業・新規事業のプロセスならば成功できるのか、再現性を持った成功プロセスを模索しているところだという。
アイディアがあったらそれを仮説として、MVPを作って、フィードバックをもらって、それでアイデアやビジネスモデルを修正していく。このやり方が非常に優れているなぁと“当時”は思っていました。
しかし、2010年頃になり、システム開発・アプリケーション開発の世界ではアジャイルが浸透し始めていた。アジャイルのコンセプト自体は90年代からあるが、ようやく現場でアジャイルの取り組みが始まっていた頃だった。
現場で体験しているなかで、ちょっと待て、と。今までシステム開発の工程はアイディアで、とにかくブラッシュアップしていけば成功に近づけるという風に言われていたが、事業も繰り返す反復工程の中で作っていくことができるんじゃないかと思い始めました。
そして、和波氏はその後Lean Startupというものに出会った。スティーブン・G・ブランク氏の『アントレプレナーの教科書』などを読んで、「まさに私が思い描いていた、事業開発こそ反復的に行うべきなんだという考え方は2000年代後半、アメリカではとっくに取り組みが始まっていて、成功事例も出始めていると気づき始めた」と話す。
そこから、“起業科学の研究者”として、起業に一番適したプロセスを探りながら実証実験・臨床を繰り返している。