『絵を描く以外に君はどういった貢献ができるのか?』──学生時代に気づいた「多様性がクリエイティブの燃料」
ヘルシンキのアアルト大学*2の大学院でデザインを学んでいた池田氏は、「IDBM(インターナショナル・デザイン・ビジネス・マネジメント)」というプログラムに参加。これはマーケティングの学生と工学系の学生、デザインの学生を3人チームにして企業インターンに派遣するというプログラムである。
*2:旧University of Art and Design Helsinki(アアルト大学)
その際に彼はマーケティングやテクノロジーに特化した学生とともにフィンランドの精密機械メーカー「SUUNTO(スント)」に派遣された。ところが異なる専門性を持つチームで何かを生み出そうという時に、自身のデザイナーとしてのスキルが非常に偏っていることを自覚したという。
すでに日本の大学でデザインを学んでいた池田氏はスケッチなどでの可視化はできたが、それ以外のことができなかったのである。
マーケティングやエンジニアリングを専攻する学生が、それぞれの専門分野から新しい商品像や新しいアイデアを出している時に、僕は発想力ばかりで、根っことなるものを持つことができなかったんです。「絵を描く以外に、君はどういった貢献をしてくれるのか?」というチームメンバーからの視線を、ひしひしと感じました。そのような苦い体験から、デザイナーとして、どう職能を広げたらいいのかを必死に考えるようになりました。
池田氏は学生時代に味わった挫折から、様々なバックグラウンドを持つ人たちとクリエイティブ活動をする中で、デザイナーとしての職能を広げる必要性と、多様性がクリエイティブの燃料そのものであることに気がついた。同じ人種や同じスキルセットを持つ人材が集まったチームで活動すれば、コミュニケーションコストもかからず、スムーズに仕事が回る。だが、今までになかった新しいものを作り出したり、それまで見えていた路線から外れたアイデアを出す場合には、多様性の中で物事を作り上げていく必要がある。